政界にアベノ爆弾が投下された。2月8日に発売された「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)が思わぬ波紋を広げている。背後に見え隠れする「岸田応援団」の正体とは?
政治部デスクが解説する。
「中身は憲政史上最長の3188日に及んだ安倍政権の裏舞台に関し、本人みずからが語り尽くしたものです。語り口は軽妙で『プーチンは意外に気さく』『トランプはビジネスマン』など海外首脳の雑感から悲願の憲法9条の改正、さらには国会で疑惑を追及された森友・加計問題、『桜を見る会』に関してもかなり踏み込んだ発言をしている」
回顧録「安倍政権を倒そうとした財務省との暗闘」の章では、経産省出身の秘書官が実力を握った安倍政権では“安倍下ろし”を仕掛ける財務省との暗闘だったとし、
〈私は密かに疑っているのですが、森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない〉
と、財務省の策謀説にまで言及しているのだ。
「インタビューは2度目の体調不良で退任した20年秋から翌21年秋まで18回、計36時間にわたって行われたものです。よって旧統一教会との関係に関しては一切触れられていません。が、内政・外交ともにあまりにもぶっちゃけた内容のため、国会では『守秘義務違反ではないか』と野党から質問が相次ぎ、閣僚は軒並み『コメントを控える』と答弁しています」(前出・政治部デスク)
その中でもやり玉に上がったのが河野太郎デジタル相(60)だ。回顧録には17年に外相に起用された際には持論の「原発ゼロ」を封印させられたこと。また、翌18年の北方領土交渉では安倍・プーチン会談で「2島返還」の合意を取り付けたが、外相レベルの交渉で破談となったことなどが暴露されている。同じく国会で執拗な追及を受けた河野デジタル相は12回も「所管外だ」と回答拒否に追い込まれているのだ。
この本の背景について官邸キャップが打ち明ける。
「実はこの本の仕掛け人となっているのが北村滋氏(66)です。安倍政権では内閣情報官としてさまざまな謀略を仕掛け“官邸のアイヒマン”と恐れられた安倍総理の側近でしたが、実は岸田文雄総理(65)と同じ開成高校のOBなのです。同窓生の国会議員や官僚からなる永霞会(永田町・霞が関開成会)のメンバーで、そのバックには同じく同窓で、“メディア界のドン”こと読売新聞代表主筆・渡邉恒雄氏(96)も控えており、同校から初の総理を誕生させるために陰で動いた組織だと言われている」
つまり、支持率20%台まで急落した岸田政権を援護射撃するために安倍秘録が使用されたというのだ。
「回顧録では『首相にふさわしいかは、国を守る最後の砦である自衛隊の最高司令官が務まるかどうか。岸田さんは非常に適任だ』などと総理を持ち上げ、反対にポスト岸田の最右翼の河野氏を徹底ダメ出し。岸田総理のライバルを殲滅する狙いがあったようです」(前出・官邸キャップ)
まさに死人に口あり。政局は死後も依然として安倍1強のまま。