「アイツら、ナメとるんですよ」
こう苦笑まじりに答えるのは、巨人・岡本和真。その隣にはイタズラっぽく笑みを浮かべるロッテ・佐々木朗希の姿があった。どちらも侍ジャパンの一員だが、これは3月4日の中日との壮行試合後のヒーローインタビューの一幕である。スポーツ紙デスクが振り返る。
「7回に待望のチーム1号を放った岡本と、先発登板して3回を無失点に抑えた佐々木の2人がお立ち台に上がりました。その壇上で『師匠もたくさん打ってくれると思うので、応援よろしくお願いします』と、普段は口ベタな佐々木が岡本のことを『師匠』とイジってきたんです。佐々木の他にもオリックス・宮城大弥やヤクルト・村上宗隆からも呼ばれているニックネーム。今季から巨人ではキャプテンに抜擢されましたが、どうも代表チームでは『イジられ役』が定位置になりそうです」
巨人では「ビッグベイビー」「若大将」「岡本様」と呼ばれてきた岡本の「新愛称」。その名付け親は、3学年下の村上だった。スポーツ紙デスクが続ける。
「侍ジャパン宮崎キャンプの3日目でした。サブグラウンドでの練習中に、やたら村上が岡本のことを指して『師匠!師匠!!』と声を張り上げていたんです。その時の様子について、TBSの古田敬郷アナが囲み取材の場で質問すると『初めて会った時からずっと師匠なので』とひと言。かねてからプライベートで食事を共にするなど交遊を重ねる中で、球団の垣根を超えた『師弟関係』が築かれたようです」
そんな2人の関係性について、宮崎合宿中に岡本を直撃してみると、
「ずいぶん前からふざけて、勝手なこと言うとるんですよ。なんも免許皆伝とか必殺技を教えたつもりもない。年齢が近いから気を許しているんやと思うんですけど…。まぁ、完全に先輩をイジってますよね」
困惑気味にそう語ったのである。ならばと、言い出しっぺの村上にも「師匠」について改めて聞いてみた。別の日に、室内練習場の「ひなた木の花ドーム」から帰途につくところで質問すると、
「はい、ボクが勝手に言ってるだけですね。ただ、イジってるわけじゃなくて、尊敬の気持ちを込めて言っているんですよ」
そう言うと、ニヤリと白い歯を見せて、送迎バスに乗り込んでいくのだった。
あの「村神様」が畏敬の念を抱くほどの存在感が、岡本にはあるのだろう。強化試合を追えて打率3割5分、1本塁打の岡本と、3月7日のオリックスとの強化試合で待望の一発を放った村上。途中合流したメジャー組に負けない「師弟タッグ」で、侍打線を牽引してくれることだろう。