それからおよそ7カ月、国会の閉会中審査に付された集団的自衛権問題で、総理と軍師を隔てる亀裂はさらに拡大したという。
安倍 憲法改正、どうにかならないか。
菅 今は無理です。時期を待ちましょう。
安倍 そうか‥‥。ならば集団的自衛権は?
菅 世論の動向を見ながら、こちらも慎重に。
安倍 また「慎重」か。
菅 公明党に対する配慮も必要ですから‥‥。
総理周辺によれば、こんなやり取りが何度も繰り返されたあと、集団的自衛権問題は閣議決定を経て国会へ送られたが、慎重居士の菅氏の“横ヤリ”によって、原案は次々と骨抜きにされていったというのだ。
「閣議決定後、内閣支持率は10%も急落し、50%を割り込んでしまった。『支持率の高いうちに、やれることはやってしまう』が総理のスタンス。それが菅氏に自制を迫られたあげく、原案は骨抜きになるわ、支持率は下がるわ、ではたまらない。総理の菅氏に対する不信感は、ここへ来て決定的なものになりつつあります」(中堅議員)
そんなことなら、同じく支持率が50%を割り込んだ特定秘密保護法の時のように、安倍カラーで突っ走ってしまえばよかった、というわけである。
安倍総理を取り巻く同志らの、菅氏に対する怨嗟の声はさらに激しい。同志の一人が耳打ちする。
「菅氏は安倍総理の覚えめでたきをいいことに、閣僚人事にも党人事にも手を突っ込んでくる。小野寺五典氏を防衛大臣に、石破茂氏を党幹事長にと、敵になりそうな一言居士の連中をやっかいなポストに追いやったのも菅氏。『陰の総理』とまで称されるに至ったその増長ぶりに、当初から党内にあった『菅降ろし』の動きが今、加速しているんです」
折しも、7月13日に行われた滋賀県知事選で、自民、公明の推薦候補が民主系候補に敗退。そんな中、永田町を揺るがす仰天情報が飛び込んできた。なんと、三顧の礼をもって菅氏を軍師に迎えた安倍総理が、ついに菅氏の官邸からの“追放”を決断したというのだ。
安倍総理に近い党重鎮の一人は、「総理は9月に行う予定の党執行部人事を8月下旬に前倒しし、これと合わせて本格的な内閣改造に踏み切る」としたうえで、次のように明かす。
「改造の規模は閣僚の半数以上に及ぶ模様だが、最大の目玉となるのが菅氏の処遇。総理は菅氏を官房長官から党幹事長にスライドさせ、官邸への直接的な影響力を菅氏から剥奪したうえで、新設される安全保障法制担当大臣に現幹事長の石破氏を当てるハラだ。要するに、総理に安全運転を迫りながら、集団的自衛権問題で内閣支持率を急落させ、滋賀県知事選でも敗退を喫したことへの『責任を取らせる』ということだよ」