しかし、7月16日、中国国家統計局は、こんな発表をしている。
「今年4~6月期の中国のGDP(国内総生産)成長率は7.5%となり、13年の7~9月期以来、3四半期ぶりに上昇に転じた。下半期も中国経済は安定し、さらに成長する可能性もある」
莫大な不動産投資によって、住民のいないゴーストタウンが中国には多くできた。それらは「鬼城」と呼ばれるのだが、この政府発表のウソを三橋氏が解き明かす。
「鬼城であっても建設するとGDPにカウントされます。成長の数%は、まさに見せかけのゴーストタウンを使った成長なのです」
危機を察したのは、正しい情報を握っている共産党の幹部たちだ。彼らは海外に資産を逃がし、その総額は110兆円にも上るという。また、香港など比較的正しい情報が入る地域では、購入額の3割以上安い値段での不動産の投げ売りも始まっている。
未曾有のバブル崩壊は、当然、周辺国をも巻き込むことになる。今月末に「ヤバイ中国」(小社刊)を上梓する評論家の渡邉哲也氏が続ける。
「中国の不動産バブルの影響で、台湾の台北市の不動産利回りが約1.2%上昇しています。台湾もバブル状態になっていて、他からお金を引っ張ってこないとバブルがはじける危機にあります」
台湾では、今年3月、中国との「サービス貿易協定」を巡って騒動が起きたばかりだ。中台間での貿易を自由にする法律なのだが、中国に台湾が飲み込まれることを嫌った学生が立法院を占拠。法案成立が先延ばしになっている。
「中国の崩壊に巻き込まれる前に、どこかからお金を調達しないと台湾は自国がもたない状況なのです。まだ中国にはお金がありますから、サービス協定で中国のお金を引っ張ろうとしたということなのです」(渡邉氏)
法案成立をもくろんだ台湾与党・国民党の馬英九総統の資金源は、中国企業だ。自国経済と民意、中国系スポンサーの思惑の間で板挟みにあっている状態になっているという。
もう一つ、崩壊直前の中国の金をあてにしている国がある。合わせてGDPの約3分の1を占めるサムスンと現代自動車が減収・減益になった、韓国である。韓国の朴槿恵大統領が、中国の習近平国家主席にすり寄った背景は以前既報したとおりだ。
「日本のバブルがピークだった時に、三菱地所が米国のロックフェラー・センタービルを買い、結局3分の1の値段で売りました。それと同じで自国の土地などを高い時に中国につかませるゲームですよ。台湾と韓国は最後に誰が損を引くかというババ抜きをやっているのです」(渡邉氏)
台湾・韓国に中国系企業が進出すれば、両国の銀行から金を借りて事業展開をする。そのままバブルが崩壊すれば、巨大な不良債権を抱える壮絶な“デスゲーム”が始まっているのだ。