新官房長官には安倍総理のタカ派路線を積極的に後押しする人物が抜擢されることになるとのことだが、自民党の別の重鎮筋からは菅氏の追放を決断した総理の心境を代弁する、次のような声も聞こえてくる。
「菅氏のこれまでのふるまいを巡っては、総理自身、同志らから激しい突き上げを食らってきた。『菅氏は留任』とのマスコミ情報が流れているのも、菅氏追放をサプライズに仕立てるための演出。同志らの間に充満する不満を一気にガス抜きし、安倍カラーを押し出すための基盤を固めたい、ということでしょう」
石破氏を幹事長に追いやった自分が同様の島流しにあう‥‥。そんな皮肉な追放劇を敏感に察知していたのか、菅氏をよく知る自民党関係者は「最近はちょっとしたことにも、イラついたりキレたりしていた」として、次のように話す。
「菅さんは頑固で融通の利かないタイプで、かつ、恨みを引きずる執念深いタイプ。また、めったに笑わない、いつ会っても仏頂面、と言われるクールさとは裏腹に、小心で神経質な一面もある。これまではそんな素顔を見せることはなかったが、今年に入って露骨なコワモテぶりが目立つようになった。やはり安倍総理から疎まれ始めたことへの焦りがあるんでしょう」
都知事選に出馬した舛添要一氏の応援演説を拒否した小泉進次郎氏を公然と非難した一件しかり、東電がまとめた「吉田調書」を朝日新聞に流した犯人を血まなこで探し出そうした一件しかり、集団的自衛権問題を番組で追及したNHKの国谷裕子キャスターに隠然たる圧力をかけた一件しかり、外国特派員協会でフランス人記者から憲法改正について突っ込まれ、キレ気味に気色ばんでみせた一件しかり、というわけだ。
菅氏は秋田の農家の長男として生まれ、上京後、小此木彦三郎代議士の地元秘書を経て横浜市会議員に。その後、横浜市西区を中心とする神奈川選挙区から出馬し、1日300軒の有権者宅を回るドブ板選挙で国会議員となったが、「野心とは無縁の泥臭い苦労人」と評される素顔にも疑問の声が上がっている。
自民党重鎮の一人は「菅氏の総理への下心はミエミエ」としたうえで、こう指摘するのだ。
「現に菅氏は党内に隠れ派閥を準備し、総裁選出馬の機をじっと待っている。その点も安倍総理のカンに障ったんでしょう。ただ、菅氏は酒もタバコもやらない堅物で、それが政治家としての度量を狭くしている。その意味では、本人の言う『総理を目指さない』のではなく、『目指せない』ということかもしれない」
目前に迫った内閣改造で事件は起こるのか。菅氏にとっては、眠れない日々が続くことになりそうだ。