安倍内閣が閣議決定した集団的自衛権を行使容認する憲法の解釈変更に滋賀県民が先の知事選でNOを突きつけた。そして、滋賀のお隣の三重県では、7月11日に元県職員が閣議決定は違憲だとして安倍総理ら閣僚を相手取り提訴。同県の松阪市長も国に対する「法廷闘争」に向け始動中だ。松阪市長と元県職員が「打倒・安倍内閣」の思いを語り尽くした!
「世界中で戦火を上げているアメリカは世界の警察を任じていますが、何のことはない。やっていることは暴力団の勢力拡大に等しい。そんなアメリカに集団的自衛権で手を貸そうとする日本はチンピラですよ。これまで平和国家として歩んできた日本がチンピラであっていいわけがない」
怒りもあらわに語るのは去る7月3日に「安倍総理への法廷闘争」を宣言した三重県松阪市の山中光茂市長(38)。山中氏によれば、集団的自衛権を巡る閣議決定は、国民の平和的生存権を保障する憲法に反する。ゆえに閣議決定は無効だという確認を求めて国を相手取り、提訴も視野に入れた行動を取ることを、この日、明らかにしたのだ。
それと併せて、全国の首長や議員、一般市民に提訴への参加を呼びかける。活動の受け皿として、近く「ピースウイング」と名付ける市民団体を作るという。山中市長が続ける。
「私は以前、ケニアで1年間、医療活動のボランティアをしたことがあるんですが、難民キャンプで感じたことは政治が一度壊れると、回復するのは難しいということです。集団的自衛権を理由に直接日本を攻撃してこない他国への関与をここで認めてしまうと、取り返しのつかないことになる。愚かな為政者が平和を壊したあとで、当たり前に生きている人たちの手で平和を取り返すことは難しいんです。戦争を仕掛けられるきっかけを与えないことが重要です。平和主義を徹底することこそ戦争抑止につながるんです」
山中市長と同様、閣議決定への不信感が、滋賀知事選での自公系候補の敗北につながったと言うのは、政治評論家の本澤二郎氏。
「滋賀県知事選は投票率が51.5%と低かったのに自公系の小鑓(こやり)隆史候補が1万3000票余りの差をつけられて三日月大造氏に敗れた。それは自公政権を支える公明党の支持団体・創価学会が動かなかったためです。学会員たちの間では集団的自衛権を閣議決定したことに対する反発が強いんです」
となると、安倍総理にとって心配なのは今後の地方選への影響だろう。年内には、まず10月に原発問題を抱える福島県で、11月には基地問題で揺れる沖縄県で知事選が予定されている。
「安倍政権は滋賀県知事選で勝利し弾みをつけ福島、沖縄の知事選に臨みたかった。ところが、出ばなをくじかれた格好です」
と前置きして、政治評論家の小林吉弥氏が語る。
「福島県知事選も沖縄県知事選も滋賀以上にハードルが高い。福島県は民主党が強い地盤だし、原発再稼働を打ち出した安倍政権には強い反発がある。佐藤雄平現知事が出馬するかは未定ですが、再稼働に反対する候補に相乗りはできない。選挙の直前の9月には鹿児島県の川内原発が再稼働する予定なので情勢はなおさら厳しいですね」
沖縄県知事選となると、さらに厳しい。というのも、那覇市の翁長雄志(おながたけし)市長が立候補する意向を固めているからだ。翁長氏はかつて自民党県連幹事長を務めたが、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対。共産、社民なども翁長氏を推すと言われている。
「普天間移設に転じた仲井眞弘多現知事は県民からは裏切り者と言われています。保守が割れて、翁長氏に野党がつくと、仲井眞氏が3選を果たすのは苦しい。つまり、安倍政権は3連敗を喫する可能性もあるわけです」(小林氏)
3連敗となると、いよいよリベラル派を中心とした党内の反安倍勢力が安倍降ろしに動きだす。
「となると、集団的自衛権に命を賭ける安倍総理が一か八か、年明けにも解散に打って出る可能性すらある」(小林氏)
年末は政治の流れが変わる潮目になりそうだというのだ。