では、中国のトップである習る習氏は何をしているのか──渡邉氏が明かす。
「6月、習氏は自身の家族・親族に所有不動産の売却を命じました。汚職問題で、みずからが突っ込まれないために資産をきれいにしたということです。しかし、バブル崩壊のダメージを防ぐ意図はもちろんあります」
そもそも今日の事態を招いた主犯は胡錦濤前国家主席だった。それを受け継いだ習氏だが、傷口は広がるばかりで打開する策がないのだという。
「習氏には中国が成長する絵が描けないのです。本来なら一般人民の所得を引き上げて個人消費を中心に成長するべきです。しかし、それをやると人件費も上がり、生産拠点としての中国の強みが失われてしまいます」(三橋氏)
現在、1万4000社もの日本企業が中国に進出し、14万人もの日本人が駐在している。崩壊するとわかっているなら、早期の撤退を考えるべきだろう。
「中国には民事訴訟法236条というのがあります。これは民事問題を抱えている外国人の出国を止めることができる法律です。現地の共産党と絡んで工場などを作るので、撤退するとなると金を請求されるのです。お金がない企業は出るに出られない状態です」(渡邉氏)
実質的に「拉致」され「人質」となった日本企業向けに「中国撤退コンサルタント」というビジネスが存在するほどだ。崩壊後、混乱する中国から在留邦人を脱出させる計画を、今のところ日本政府は考えていないという。もう一つ心配しなければならないのは、金融方面での影響だろう。
「現在、日本の銀行が3兆円、民間などの直接投資が5兆円と言われています。この損切りをできるかどうかが重要です。『たったこれだけ』と考えて捨ててしまわないと、ショックの影響が大きくなります。金融の安全保障とでも言うべき決断を、日本政府ができるかどうかが鍵でしょう」(三橋氏)
何より懸念されるのは、30%にまで跳ね上がると言われる中国の失業率だ。それに伴って、移民が日本に押し寄せてくるという。
「『流民』とでも言うべきです。歴史的に中国で革命が起こる時は流民から始まります。昔は中国国内で移動していましたが、現在では海外に出ます。数十人のボートピープルなんてものじゃなく、100万人規模です。社会が混乱することは間違いないでしょう」(三橋氏)
もはや中国のバブル崩壊を止める手だてはないのだろうか。渡邉氏はこう提案する。
「たった一つあるとすれば、共産主義革命です。共産党の幹部も含めて私有財産を全て捨てて、公平に再分配して、共産主義国家になるということです。もちろん貧困にはなりますが。もっとも、一度資本主義の甘い蜜の味を知った彼らが、そうするとは思えないですけどね」
崩壊のカウントダウンは始まっている。