「安倍総理は美辞麗句を並べたてるが、心がこもっていない。戦争に行くのは若者なんですよ。安倍さんではない。それなのに、67年守ってきた不戦の国是を国会の審議も受けず、一内閣が勝手に崩す。こんな不条理があっていいわけがない。1日の閣議決定を受け、矢も楯もたまらず安倍総理と国務大臣の憲法違反を確認する訴状を書き上げ、東京地裁に提出しました」
こう語るのは、安倍総理と閣僚を提訴した、元三重県庁の幹部職員の珍道世直(ちんどうときなお)氏(75)だ。珍道氏には戦争体験がある。
「幼い頃、避難した防空壕が爆音で揺れた感覚は今でも忘れらない。それだけに戦争をしてはならないという思いが強いんです。私は弁護士を立てず、本人訴訟で国を相手に闘う。それもたった一人です。しかし、そうしないではいられなかった。同じ気持ちの人が全国に広がればいいと思います」
本澤氏はこうして立ち上がった人たちが次々と同様の裁判を起こし、司法の機能がマヒするくらい訴訟が多発するのではないかと予測する。
「もちろん、どの裁判も最高裁まで行くでしょう。国会はオール与党に近い状態で御しやすいかもしれないが、司法はそうはいかない。そうした動きも安倍総理にはプレッシャーになると思う」(本澤氏)
ただし、安倍総理もこのまま手をこまねいているわけではない。安倍総理が切れるカードは北朝鮮拉致被害者の帰還問題である。
安倍総理に近い政治部記者が言う。
「この9月にも安倍総理が北朝鮮を電撃訪問し、拉致被害者を連れ帰ってくるのは確実な情勢ですが、問題はその人数。片手以上と聞いていますが、そこに横田めぐみさんが入っていれば、支持率が急上昇するのは必至。逆にその数が2人か3人で、失望感が広がればズルズル支持率は下がり続け、求心力が落ちるでしょう。が、そこは交渉相手が相手だけに読めない」
悲願だった集団的自衛権を閣議決定したものの、それと軌を一にして支持率が急落、劣勢に立たされた安倍総理──。
「総理は潰瘍性大腸炎の特効薬のアサコールが効いているせいか、最近は寝酒にワインを2杯ほど飲むようになったんですが、ストレスから酒量もだんだん増えているようです。滋賀県知事選の直前、10ポイントリードしているはずだった小鑓氏が劣勢に立たされたと知って高村副総裁に『どうなっているんだ』と激怒。敗戦が決まった際も自民党の選対関係者にどなり散らしたそうです。総理の病気はストレスが悪化させるが、これからさらにストレスをためる事態が続きそうです」(政治部記者)
そんな総理に政治の舵取りができるのか。銀座泰明クリニック院長で精神科医の茅野分氏が言う。
「安倍総理には前回辞任した時に見られた弱気な面と今回の強気な面の二面性があると思います。すなわち、躁と鬱、双極性の可能性があります。とすると、躁状態の時に発した強気な言動が裏目に出て、鬱状態に陥ることがありうる。これは日常診療で患者さんにしばしば見受けられる光景です」
強気から一転、何も手につかないレベルにまで、弱気になる可能性があるというのだ。最後に山中市長が言う。
「日本のあちこちから、集団的自衛権の行使容認を絶対阻止するという動きが広がることの力を信じたい。どれだけ反発が強いかを知らしめれば、総理は、またおなかが痛くなって政権を投げ出すかもしれませんよ」
地方から上がった「打倒安倍内閣」のノロシは、はたして、大きな火の手となって総理を追い詰めることになるか──。