ついに始まった中国の不動産バブル崩壊。“100兆円の不良債権”を前に、すでに周辺国の間では“チャイナババ”を引き合う死のゲームが始まっているのだ──。
道路はうつろな目で座る失業者であふれている。その数は中国全土で約2億7000万人。時折聞こえるマシンガンの発砲音は、今回の事態を招いた政府を非難するデモ隊に向けられた人民解放軍のものだ。略奪と破壊のかぎりを尽くされた日本企業。日本人駐在員たちは国外脱出を許されず、ただ自宅アパートで震えて過ごすのだった──。
これは、まもなく中国に訪れるバブル崩壊後の、主要都市の姿である。
広大な国土と9億人を超える労働人口に支えられ、世界2位の経済大国になった中国。「移民亡国論」(小社刊)の著者で、経済評論家の三橋貴明氏が中国経済崩壊の経緯を解説する。
「リーマン・ショックの影響で、中国は不景気になりました。そこで共産党政府は4兆元──当時のレートで約54兆円の景気対策を行うと発表したのです。それ自体は正しい政策ですが、中央政府は地方政府に対策をまる投げしたのです」
中央から命じられた地方政府だが、財政調達の仕組みが未整備な状態だった。そこで彼らは「融資平台」という金融機関を作ったのだ。融資平台は、シャドーバンキングと呼ばれるもので、10~13%のハイリターンの証券化商品「理財商品」を一般人民に売ることで資金を調達したのである。
「そのお金を地方政府は、公共投資や不動産投資に投入して景気対策を行いました。不動産が高値で売れている間は、お金を回収して『理財商品』を買った人民に還元できていました」(前出・三橋氏)
しかしこの5月、中国の不動産市場に不気味な兆候が表れた。中国主要70都市のうち半分の35都市の新築住宅価格指数が前月より下落したのだ。
「4月は6都市でしたから明らかに増えています。これも含めて最近、不動産価格の上昇が終わりました。09年に『理財商品』が大量に販売されたのですが、その償還期限はだいたい5年。つまり今年がその返却期限なのです。共産党が調べたところ、すでに130億円の債務不履行が発生しているのですが、本当にそんなに小規模か疑問です」(前出・三橋氏)
なぜなら、地方政府の債務は昨年6月時点で実に300兆円を超えていて、その額はアメリカの国家予算の歳出額に匹敵する金額なのである。不動産価格の下落によって、返却不能となった「理財商品」は焦げ付こうとしているのだ。
「バブル崩壊の問題というのは不動産価格の下落ではなく、それに伴って生まれる不良債権です。中国政府の数字が信用できないので規模を把握できませんが、100兆円を超えるのは確実と言われています」(前出・三橋氏)
世界中のどの国も経験したことがないとてつもない規模である。