テレビをつければニュースもワイドショーも侍ジャパンとWBC一色だ。3月16日の準々決勝、イタリア戦では世帯平均視聴率48%という大会史上過去最高の数字を叩き出した。
ところが、だ。開幕から秘かに囁かれているのが「本気なのは日本だけ」という禁句である。とりわけ大手メディアでは、絶対にそれに同調してはいけない雰囲気がありありだという。
それをハッキリと口にした人物がいた。3月14日の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)でのことだ。
「デーブ・スペクター氏が、アメリカ国内の様子を伝えるリモート出演で『WBCをオリンピック並みに盛り上げてやってんの、日本だけなんですよ』と言ってしまったんです。スポーツバーでも放送されず、3月半ばからはアメリカは大学のバスケットボール一色だという報告で、これは実際にそのようです。かといって、デーブ氏はWBCを否定するわけではなく、WBCはアメリカ国内ではなく世界に広めるのが目的なのでは、と穏やかに収めていました。まぁ、『日本が盛り上がって何か悪いのか』といった批判が巻き起こりましたが」(スポーツライター)
デーブ氏が指摘したように、日本と対戦したチェコでは、野球中継としては最高の視聴者数(4試合で計84万人を記録)だった。人気スポーツのサッカーと比較になる数字ではないものの、野球が徐々に浸透していると、チェコの国内メディアが伝えている。
ではアメリカ国内はというと、デーブ氏の報告のように、アメリカの初戦イギリス戦はFOXの中継で、視聴者数148万人の視聴率0.8%。これでも09年大会以来の、高めの視聴率だった。だがその後の2戦は79万人、72万人と視聴者数は半減してしまったようだ。
「日本国内では全戦40%以上ですから、開催国アメリカで0.8%という数字は少なすぎて驚く人ばかりでしょう。プロ野球の土日のデーゲームでさえ、日本では2~3%ありますからね。ですが、アメリカ国内の野球中継は、MLBのワールドシリーズでも、近年はよくて5%前後。2022年でいえば、アメリカ国内のスポーツ中継で、野球は200位以内にひとつも入っていません。8割以上がプロと大学生を含むアメフトで、その他はバスケットボール、サッカーW杯などで占められました。MLBのワールドシリーズは、競馬のケンタッキーダービーよりも視聴者が少ないのが現状です。その中でWBCだけが日本や他の中米諸国のように盛り上がるのは、至難の業。準決勝で激突すると確定的に伝えられていた日本とアメリカの一戦が急遽、決勝でしか当たらないことになったというナゾの変更があったのも、日本に決勝戦まで残ってもらって、そのフィーバーに乗じて稼ぎたいというMLBの思惑と言われています」(前出・スポーツライター)
なにやら興行サイドの思惑が渦巻いているが、中国が卓球で圧倒的に盛り上がるように、その国で最も人気のあるスポーツで世界一になれば、国民にとっては喜ばしいことだろう。
やはり日本は野球が強くて、愛されている国。そんな根本的なことを、今回のWBCは再確認させてくれたのかもしれない。
(飯野さつき)