スターホースを含めた合計46頭もの日本馬が春の国内G1戦線から次々と離脱し、サウジやドバイで開催された国際競走への参戦に踏み切った最大の理由は、巨万のオイルマネーに物を言わせた「超高額賞金」と「渡航費丸抱え」にあったとされる。
世界最高賞金レースとして知られる「サウジカップ」(G1、ダート1800メートル)で優勝したパンサラッサが手にした1着賞金は、1000万ドル(約13億円)。同レースで3着に敗れたカフェファラオが手にした賞金も200万ドル(約2億6000万円)に上り、この金額は同馬が出走を回避した国内ダートG1「フェブラリーステークス」(ダート1600メートル)1着賞金の2倍以上だ。
同様に「ドバイワールドカップ」(G1、ダート2000メートル)を勝ったウシュバテソーロの1着賞金は696万ドル(約9億1000万円)。「ドバイシーマクラシック」(G1、芝2410メートル)」制したイクイノックスも、1着賞金348万ドル(約4億5500万円)を得ている。この金額もやはり、同馬が出走回避した国内G1「大阪杯」(芝2000メートル)1着賞金の2倍以上となる。
こうした超高額賞金に加え、サウジカップデーやドバイワールドカップデーの参戦については、主催者が馬主や調教師らの渡航費用を全面負担する仕組みになっている。さらに言えば、同じ中東地域ということで、サウジからドバイへの転戦も容易なのだ。
JRA(日本中央競馬会)関係者も、次のように危機感を露わにしている。
「サウジやドバイをはじめとして、海外で開催される超高額賞金レースに対抗する形で、JRAも暮れに行われる有馬記念(G1、芝2500メートル)の1着賞金を、22年にそれまでの3億円から4億円に増額し、さらに今年は4億円から5億円へと引き上げました。しかし13億円や9億円が相手では、やはり焼け石に水の感は否めない。圧倒的なオイルマネーを前に打つ手が見つからない、というのがJRA関係者の偽らざるホンネです」
ちなみに、JRAが外国馬を招待する国際G1「ジャパンカップ」(芝2400メートル)の1着賞金も有馬記念と同様、今年から5億円に引き上げられた。
だが、外国馬陣営からは「コンクリートみたいに硬い東京競馬場の芝コースはノーサンキュー」との声が少なくなく、同レースもジリ貧傾向にある。
国内G1はどこまで空洞化してしまうのか。日本競馬界が抱える悩みは深い。