米ニューヨーク州のマンハッタン地区検察が招集した大陪審は3月30日、次期大統領選への出馬を目指しているトランプ前大統領の起訴に踏み切った。
アメリカで大統領経験者が起訴されるのは、史上初のこと。起訴内容は明らかにされていないが、複数の米メディアによれば、16年の大統領選の際、トランプ氏との不貞関係を暴露しようとした元官能女優側に支払われた口止め料を巡る問題に加え、罪状は重罪も含めて30件以上に上る可能性があると報じられている。
具体的な起訴内容に対する罪状認否は、トランプ氏が州裁判所に出頭する4月4日に行われる予定だ。トランプ氏の代理人は米ABCニュースのインタビューに応じ、トランプ氏が今回の起訴に「ショックを受けていた」ことを明かした上で、「司法取引には応じず、無罪を主張して、積極的に争っていく」との方針を公にした。
だが、トランプ氏の代理人による表向きの説明とは裏腹に「事態はトランプ氏が描いたシナリオ通りに進んでいる」との見方が、根強く囁かれてきたのも事実だ。トランプ氏の動静に詳しい国際政治ジャーナリストは、次のように舞台裏を明かす。
「来年11月に行われる大統領選に向け、落ち目の人気をいかに回復していくか。これがトランプ氏にとっての至上命題であり、今回の起訴へと至る検察当局の一連の捜査についても、トランプ氏はむしろ積極的にこれを利用しようとしていた。SNSに自ら『私は3月21日に逮捕されるだろう』と書き込んだのもそのためで、離れかけていた支持者らに『国策捜査』を印象づけて再結束を促すことに、その狙いがあったのです」
事実、米FOXニュースが今年3月24日から27日に、次期大統領選に向けて実施した世論調査では、共和党支持層におけるトランプ氏の支持率は2月の調査から11ポイント増の54%へと急上昇。ライバルと目されているデサンティス氏(フロリダ州知事)の24%を大きく上回る結果が出たのだ。国際政治ジャーナリストが続ける。
「しかも、トランプ氏に対する公判前手続きにはかなりの時間が必要で、初公判が開かれるのは最短でも来年になるとみられている。そのため、無罪か有罪かを決める陪審評決も、次期大統領選が行われた後の来年11月以降となる公算が極めて高い。ズバリ、『トランプ氏はハナから起訴されることを望んでいた』と言っても過言ではありません」
秘かに練り上げられてきた捨て身の「炎上作戦」。まさに「トランプ恐るべし」だ。