「全国旅行支援」が47都道府県で継続となった。40都府県は実施期間を6月30日の宿泊分までで、北海道、山口県、高知県は7月14日の宿泊分まで。さらに福井県、大分県、沖縄県は7月20日まで、宮城県は7月21日の宿泊分までが対象となる。
この措置に、観光業者はもろ手を挙げて歓迎しているかと思いきや、なんと真逆の悲鳴が噴出しているというから驚きだ。
国内屈指の観光スポットたる京都の例を見ると、観光客の急増に対応が追いつかない「オーバーツーリズム」が課題となっていた。京都市観光協会は観光客に対して訪問分散を呼びかけているが、桜の開花もあり、京都市内は連日、大混雑だ。市内の観光業者が嘆く。
「今回の旅行支援の継続には正直言って、賛成しかねます。私達としては、国内からの旅行客よりも外国人を誘致して経済の活性化を狙いたいと思っています。国内からのお客様はもちろんありがたいのですが、SNS映えするスポットにしか集まらないので、経済効果はあまり得られていないんですよね」
円安が続く中、観光への経済効果は日本人よりも外国人観光客に委ねられているのだ。経済の活性化を狙うのであれば、酒類提供の飲食店を含む、夜の街が最も効果的といえそうだ。だが、ここにも大きな課題が立ちはだかっていた。地元飲食店経営者が、事情を明かす。
「コロナの感染拡大前から、バーなどの飲食店では店員が英語を喋れないことから、外国人の受け入れをお断りする店が多くありました。そのため、注文ができない外国人は木屋町周辺の外国人店員がいるバーに行ってしまい、他のエリアに分散できていない状態です。ただでさえ飲食店は人手不足なのに、英語を話せる人材に条件を絞れば、ますます集まりにくくなってしまう。せっかく外国人観光客が増えても、語学の対応ができないことが課題のひとつですね」
京都では「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」として、1人1泊あたり平日2000円、休日1000円のクーポンを配布している。旅行支援が継続されるということは、クーポンも継続だろうが「クーポンの対象店にしか客が集まっていない」と、先の飲食店経営者は不満を口にする。
旅行支援の本来の狙いは観光需要の喚起、すなわちコロナ禍で落ち込んだ観光地の経済回復にある。なのに国内旅行者の消費が見込めないことは、オーバーツーリズムよりも深刻な問題なのではないだろうか。