朝日新聞が月ぎめ購読料を5月から値上げすると、紙面で告知した。現行の月4400円から500円上がり、4900円になる(朝夕刊セット版)。果たして11%の値上げは吉と出るか、凶と出るか。
「新聞を取っていない人は、この10年ほどでぐっと増えた気がします。以前は『新聞取ってないの?』と驚きましたが、今では『新聞取ってない。フーン』という具合です。職場で読む、あるいはネットニュースで間に合う、というのが理由ですね」(新聞販売店関係者)
若者たちにとっては、高額なスマホ料金を支払った上に新聞代を払うのは、物理的に無理がある。極端に言うなら、今どき新聞を取るのは老人だけ、という話もあり、そのうち贅沢品と分類されるようになるのかもしれない。
「アメリカでも欧州でもローカル紙が中心ですから、全国紙という形態は日本特有です。全国津々浦々に支局を置く必要があるのかを考え直さないと、経費削減はできません。省庁に担当記者を全部置いているのも、無駄が多い。アメリカや欧州では、足りない情報は通信社に委ねていますから、見直すチャンスではないでしょうか」(朝日新聞社会部記者)
朝日新聞は2年前に値上げしたばかりだというのに、また値上げ。購読者の理解を得ることができるのだろうか。
「一応、新聞用紙のパルプ代が値上げしていることを理由にしていますが、記者とすれば、肩身が狭い気持ちになります。やはり連載ものとか、魅力がある記事を載せる努力が必要なのではないですか」(朝日新聞スタッフ)
今回の朝日新聞の値上げに対し、読売新聞は当面、値上げをしないとしている。となると、5月から朝日が4900円で読売は4400円となり、月500円の差が出ることに。年間6000円も違うことで、新聞を乗り換える動きにつながるのかどうか。
「いやいや、この際、新聞購読は止めようかという動きを、最も恐れています。ネット記事で間に合うと思われたら、新聞社は共倒れになってしまいます。ネットでは見られない深い記事を載せて、支持を得るしかないでしょう」(読売新聞デスク)
月4900円は日経新聞と朝日新聞が最も高く、購買料で肩を並べたことになる。黒塗りハイヤーで夜討ち朝駆けの取材、という時代は終わっていることをまだ認識していない新聞社に、未来はないような気がするのだが。
(深山渓)