今年4月15日で東京ディズニーランド(TDL)が開園40周年を迎える。アメリカ以外で建設された最初のディズニーパークで、オリエンタルランドが所有し、ウォルト・ディズニー・カンパニーからテーマのライセンスを受けている。
東京ディズニーランドとその関連パークである東京ディズニーシーは、ウォルト・ディズニー・カンパニーが完全または部分的に所有していない、唯一のディズニーパークだ。
アメリカ以外のディズニーランドでTDLが唯一収益を上げている背景には、当初ウォルト・ディズニー・カンパニーがTDL入園者の予測を誤り、儲からないだろうと判断してTDLとはライセンス契約にしたためだとされる。
「夢の国」と呼ばれるTDLだが、実はかつて面白い体験をしたことがある。
TDLから車で30分もかからない住宅街に、知人男性が住んでいた。用事があったので夜の11時過ぎに車で知人宅に行くと、不在で真っ暗だった。仕方がないので車を広い道沿いに停めると、車から降りて歩道沿いのベンチに腰掛け、タバコを吸っていた。街路灯が一定間隔で灯され、小さな芝生の公園もあり、綺麗な住宅街だった。30分ほど座っていると、タクシーが近くで停車し、金髪でプロポーション抜群な若い女性が2人、降りてきた。
「ハーイ、何をしているの」
一杯入っているのか陽気で、桜色の顔で私に向かって微笑んだ。
「友達を待っているんだ。キミらはどこの国から来ているの?」
「2人ともアメリカのカルフォルニアなのよ」
「日本では何しているの? 英語の先生ですか」
「違うわよ。何だと思う?」
「分かんないけれど、スタイルがいいからダンサーか何かやっているのかな」
暇つぶしに喋っているので、深く考えることもしなかった。
「ダンサーに似ているわ。私、TDLで働いているのよ」
「えっ、TDLで清掃をやっているの?」
園をほうきで掃いているジェスチャーをした。私が真面目な顔で言うと、2人の大きな笑い声が住宅街に響いた。
「面白いけれど、違うわよ。シンデレラなのよ」
「シンデレラってシンデレラ城に住んでいると思ったら、ここが住み家だったのか」
「そうよ、そこの家が私たちスタッフが暮らしているところなの」
「シンデレラが酔っぱらっているのも傑作だなぁ」
「あのね、シンデレラは何人かいて、交代でやってるの。×××駅の近くに私たちが集まる店があるから今度、来なさいよ」
彼女は店の名前を教えてくれた。
「本当は自分がシンデレラだって喋っちゃいけないんだけどね」
「そのうちに行くよ。シンデレラ、もうすぐ12時なるから帰りなよ」
「じゃあね~」
シンデレラたちは手を振りながら、笑顔で大きな1軒家に帰っていったのである。あとでTDLではキャストにも守秘義務があることを知り、このことは胸の内に仕舞っておいたのだ。
残念ながら彼女に教えてもらったお店には行っていないが、あのシンデレラたちはどこかで元気に一杯飲んでいるのだろうか。
(深山渓)