殿の金言について、きよし師匠に聞いてみた。当連載の単行本にも漫才ブーム時代の爆笑語録は数多く登場するが、はたして40年来の相方の口から次々と飛び出したのである。知られざるツービート秘話がここに明かされる。
北郷 この前、殿に「きよし師匠と対談しますよ」って言ったら、「“元気か?”って聞いとけ」って言ってましたよ。
きよし そういうとこ、気にするんだよね。
北郷 「漫才の準備しとけ」って伝えるようにも言われました。漫才といえば忘れもしません。10年ほど前、当時、僕の漫才コンビ「スピーク☆イージー」単独ライブの前説で、ツービートのおふたりが漫才を披露してくださったんですよ。
きよし どんな舞台だったか、覚えてないんだよな。
北郷 突然、楽屋に来られて「おい、前説で漫才やってやるからよ、出してくれよ」って。50人ぐらいしかいない客前で、7分半も新ネタの漫才を披露していただきました。
きよし うちの相方は優しいとこあるからね。
北郷 あの時は来てすぐ、3分ぐらいで漫才をやられたと思います。
きよし うちの相方はだいたい、入るのギリギリだもんな。そうした乱入でいえば、あいつがすごいなと思ったのは、(94年に)事故を起こした時あったでしょう。それで退院の日にちょうど、俺が青年座劇場でライブをやってたのよ。そしたら病院出た足で、俺のライブに来たんだからね。いきなり出てきてケツ出して──。
北郷 「顔面マヒナスターズ」の頃ですよね。
きよし 第一声は「お前、何やってんだ!?」って(笑)。
北郷 ハハハ、変わらないって感じですね。そういえば、そんなツービートのおふたりは去年も「ニュースキャスター」(TBS系)のオープニングでいきなり漫才を披露されましたよね。
きよし ライブに出るって話があって、「やるからちょっと稽古しようか」って、TBSで本番前の相方とたまたま稽古してたんだよ。
北郷 1時間ぐらいみっちりやられてましたよね。
きよし そしたらいきなり「テレビでやる」って。「何やんの?」「漫才」「どんなやつやんのよ?」「今、稽古したやつやろうよ」って、すぐ生放送でやったからね。
北郷 トータルで3~4回はTBSに来られて稽古されてましたよね。
──単行本に掲載された、「きよしさんが笑ってばっかりいてよ、稽古になんねーんだよ。お前は俺のファンか!」と、たけしさんが言い放ったというのは?
きよし そうそう。おもしろいから!
北郷 ハハハハ。
きよし うちの相方とやってると楽しいのよ。だから相方も「笑ってりゃいいから」って言うの。でもね、こっちが楽しくなかったら、見てるほうも楽しくないはずだからね。
──では、素で笑ってしまうんですね?
きよし そう(笑)。
◆プロフィール ビートきよし(64)72年、相方・ビートたけしと「ツービート」を結成。空前の漫才ブームを牽引した。長らくコンビでの活動を縮小していたが、今年4月に「オフィス北野」入りを果たしたため、完全復活も期待されている。
◆プロフィール アル北郷(42)95年、殿に弟子入り。97年より7年間、付き人を務めた。現在は「新・情報7days ニュースキャスター」(TBS系)等でブレーンとして活躍。単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」(徳間書店刊)も好評発売中。