政治

石川県知事・馳浩が地元テレビ局と不毛な応酬劇

 現役プロレスラーの知事が、地元テレビ局を相手に一歩も引かない。県民が望まない不毛なバトルはいつまで続くのか‥‥。

 馳浩石川県知事(61)といえば、昨年3月に行われた県知事選に出馬して僅差で初当選。同知事選は、28年間も在位した谷本正憲前知事が不適切発言などにより早々と不出馬を表明したことで、後釜を巡り保守が分裂してその座を争った。

「馳知事は、衆院議員時代にもセクハラ発言などにより女性支援団体から抗議を受けるなど、物議を醸してきた。選挙告示後も、妻・高見恭子との不仲・別居生活が報じられるなどし、劣勢と見られていた。それでも下馬評を覆して初当選しました」(石川県庁関係者)

 当選後も、今年元日にはプロレス興行にサプライズ参戦。得意技のジャイアントスイングを披露するなど、会場を大いに沸かせたものだ。しかし「非常識だと思う」「もっと県知事という立場をわきまえた行動をすべき」など、県民からは県庁に厳しい意見が多く寄せられたという。

 現役知事によるプロレス参戦は、北陸放送や北陸朝日放送などの地元メディアでこぞって報道された。ところが、石川テレビだけ蚊帳の外に置かれたのだ。石川テレビ関係者が内情を打ち明ける。

「1月4日のニュース番組で報道するため、参戦したプロレス団体に映像提供を依頼したのですが、拒否された。理由を尋ねると、『馳知事の意向』ということだったのです」

 バトルを引き起こす発端は1本の映画だった。

「昨年10月に公開された『裸のムラ』(東風)です。石川テレビのディレクター・五百旗頭(いおきべ)幸男氏が監督を務めた、政治ドキュメンタリー映画。五百旗頭氏は、前職のチューリップテレビ在籍時にも、富山市議会の政務活動費の不正使用について追及し、やはり映画制作までしている。問題の新作では、森喜朗元首相の地盤でもあり、保守王国と言われる石川県政の闇に切り込んでいます。馳知事は、同映画で自身や職員の映像が無断で使用されたことについて、『肖像権の取り扱いについて倫理的に納得できていない』と強情になったのです」(県政関係者)

 結果、出場団体に石川テレビへの映像提供はNGだと通達。さらには石川テレビ社長と公の場で議論することを迫り、知事就任以降、毎月末に行ってきた定例記者会見へ同社長の出席を求めたのである。

 さながらプロレスの対戦要求‥‥。県民不在の観客を置いてけぼりにした「しょっぱい試合」の始まりだった。

 馳知事の要求に対して、石川テレビはこのように書面で反論している。

〈取材活動で公務中の公務員を撮影し、その映像を使用することは、報道の目的である公共性・公益性にかんがみて、特段の許諾は必要ないと考えている。また、報道番組を基にしたドキュメンタリー映画の製作・公開については報道活動の一環である〉

〈社長が当社主催以外の記者会見に出席して当社の考えを述べることはしていない〉

 その後も石川テレビに対して、県からガチンコの出席要請があったというが、

「弊社の方針は、まったく変わっていません。社長が定例会見に出席することもありません」(石川テレビ報道部)

 こうした石川テレビの強硬姿勢に対し、馳知事は公約に掲げていた定例記者会見を中止するという暴挙に出たのだ。

「石川テレビとのいざこざから公約を破るとは大人げないし、他の地元メディアからも猛反発が起きています」(北陸地方紙記者)

 石川県知事室・戦略広報課は、今後の見通しについて、こう説明した。

「4月の定例記者会見については、これから調整を行います」

 もはや県民はゴングを要請したいだろう。

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