80年代の大ヒットドラマ「ふぞろいの林檎たち」(TBS系)に出演。清純派女優として一世を風靡したのが、石原真理子だ。ところがその後は不貞スキャンダルに宗教活動、そしてヘア写真集出版と、なにかとお騒がせな女優、というイメージが定着してしまった。
そんな石原が、自叙伝「ふぞろいな秘密」(双葉社)の出版で再び時の人となったのは、時を経た06年のことだ。彼女は同著で玉置浩二や明石家さんまら、13人の男性たちとの交際を実名で赤裸々に告白。同年12月6日、都内で出版記者会見を開くことになった。
会見場には新聞、雑誌、テレビを含め、100人を超える報道陣が集結。テレビ局では、石原の失言を危惧したTBSが1分遅れで中継するという手法をとったが、テレビ朝日は生中継を決行。
だが、会見での質問は著書の内容云々よりも「書かれた人の了承はとったのか」「実名での恋愛暴露に対する道義的責任は?」と、彼女が実名で書いたことに対する批判的なものに終始。石原は一貫して、
「当時は本当に愛していたし、今も素晴らしい思い出。感謝の気持ちを込めて、実名にしました。著書に『勇気づけられた』という声も届いていて、講演の依頼もあります」
実名での著書出版には社会的意義があったと、強く訴えたのである。
だが、そこは元祖プッツン女優と言われる石原のこと。質問と答えがなかなか噛み合わず、20分予定の会見が5分早く打ち切りに。おまけに会見後に予定していたスポーツ紙や週刊誌などの囲み取材も、キャンセルされた。各媒体から大ブーイングが起こったことは言うまでもない。スポーツ紙デスクは、こう怒りをあらわにしたものだ。
「実はテレビ局側が、実名を挙げられた男性タレントたちに配慮して、事前に石原側に対し、こちらも男性タレントの実名を挙げて質問しないので、そちらも実名を口にしないように、と念を押していたというんです。結果、石原の道義的責任を追及する流れになり、紙媒体がそのトバッチリを受ける形になってしまったわけですからね。現場にいた記者もカメラマンも、怒り心頭ですよ」
とはいえ、テレビで生中継されたことで大きなニュースとなり、著書の売り上げは上々。石原には映画やヘア写真集のオファーが殺到したというから、芸能界というのは本当に不思議な世界だ。
ただ、実名で書かれた13人の男たちは、迷惑以外の何ものでもなかったはず。まさに後悔先に立たず。若気の至りとはいえ、十数年後、こんな形でブーメランとなって戻ってくるとは…。石原真理子、恐るべしである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。