5月9日の対ドイツ戦勝記念日に、首都モスクワをはじめロシア全土で開催されてきた「不滅の連隊」や「軍事パレード」が、今年はほぼ全面的に中止される見通しとなった。「安全上の理由」とされているが、背後にはウクライナに追い詰められたプーチン大統領の、のっぴきならない事情が横たわっていた。
不滅の連隊は、市民らが戦死した兵士らの遺影を掲げて行進する恒例行事。中でもモスクワにある赤の広場で挙行される不滅の連隊は、プーチンも参加する国家的行事に位置づけられてきた。ウクライナとロシアの軍事情勢に詳しい国際軍事アナリストは、
「ウクライナ軍がロシア中部への爆撃に使用し始めたドローンは、旧ソ連製のTU141無人偵察機に独自の改良を加えたもので、モスクワへの爆撃も可能な、1000キロの航続距離能力を有している。プーチンが赤の広場での不滅の連隊の開催を中止したのは、行進中に攻撃を受けて爆死するのを恐れたから、というのが軍事専門家の一致した見方です」
加えてプーチンは、アメリカの諜報機関などが、プーチン暗殺のために秘かに送り込んだスナイパーの影に神経を尖らせており、爆死と暗殺に怯える自身の姿を糊塗するためにも、ロシア全土での不滅の連隊の開催を中止せざるをえなかったというのだ。
同様に、ロシア全土で開催される軍事パレードも、ドローン攻撃の格好の標的になりうる。中でもウクライナと国境を接するクルスク州やベルゴロド州、ブリャンスク州といった地域、さらにはロシアが一方的に併合したウクライナ南部のヘルソンやクリミア地域では、早々と開催の中止が決定、公表される事態に立ち至っている。
だが、軍事パレードの中止には、別の理由も指摘されている。
「ズバリ、戦車をはじめとする兵器を軍事パレードに回す余裕がないほど、戦況が悪化しているからです。事実、昨年のモスクワでの戦勝パレードでは、悪天候を口実に、目玉の航空ショーが中止されている。今年は赤の広場での軍事パレードだけは開催されるようですが、ロシア軍は『貧すれば鈍する』の瀬戸際状態に陥っています」(前出・国際軍事アナリスト)
窮鼠プーチンは今、ついに「袋の鼠」にまで追い込まれてしまったようだ。