中国・上海で開催中のモーターショーで起きた「アイスクリーム事件」が大きな波紋を広げている。
その日、ドイツBMWの展示ブースでは、来場客にアイスクリームが無料配布されていた。ところが中国人の来場客が配布を求めると、スタッフは「品切れ」の旨を伝えたのだ。一方、その直後にブースを訪れた外国人には、アイスが手渡された。
この模様を撮影した動画がネットに投稿されるや、中国国内のSNS上で中国人の怒りが大爆発。BMWに対する不買運動や嫌がらせが巻き起こる中、BMW車を所有する従業員に「1カ月以内に車を売却する誓約書を書け。応じなければ解雇する」との、筋違いも甚だしい通告を出す中国企業まで現れた。
BMW社は「社内管理の不足とスタッフの怠慢が原因」として謝罪するとともに「残っていたアイスはスタッフのためのものだったこと」「アイスをもらった外国人はブースのスタッフだったこと」などを説明。また、品切れを伝えたのは中国人の女性スタッフだったことも判明したが、一連の騒動は日を追うごとに拡大の一途を辿っている。
そんな中、ブースの前でBMWを批判する動画を中継していた中国人女性が、当局に連行される事件も発生。頭から黒い布を被せられ、警備員らに連れ去られる様子が、これまたSNS上で拡散され、今度は中国当局に対する反発の声が上がったのである。
騒動の裏側で何が起きているのか。
実は今回のアイス事件に最も頭を抱えているのが、習近平国家主席だという。習近平政権の内情に詳しい国際政治学者が指摘する。
「表向きはBMW批判を装っているものの、怒りは習近平に向けられたものです。中国では『愛国』を口実にした、この手の抗議パターンが繰り返されている。そのことを誰よりも痛感しているからこそ、習近平は人民の不満や怒りがやがて直接、自分に向けられるのではないかと、内心ではビクビクしているのです。自業自得と言っていいでしょう」
人民に愛国と忠誠を強要してきた、独裁政治のツケが回ってきたということだ。