犯行の動機は「金目当て」だったということか──。
東京都江戸川区の住宅で、63歳の山岸正文さんが2023年2月に殺害された事件で、江戸川区立松江第五中学校の教師・尾本幸祐容疑者が5月10日に、殺人容疑で警視庁捜査1課に逮捕された。36歳の尾本容疑者は特別支援学級の主任を務めていたが、生徒や同僚との関係は極めて良好。専業主婦の妻と2男1女の5人家族で、近所の人からは「子煩悩で優しい方という印象しかありません」と評判はよかっただけに、周囲には衝撃が広がっている。社会部記者が言う。
「尾本容疑者は逮捕時に『事件には関わっていません』と容疑を否認し、その後は黙秘に転じていますが、窃盗目的だったとみられています。被害者宅に侵入したものの、山岸さんが帰宅して鉢合わせし、刃物で襲ってしまったのではないか、と。逃走中に着替えたり、勤務先の中学校へ戻りタイムカードを押すなど、隠蔽工作とみられる行動まで取っており、好人物という評価とのギャップに驚かされます」
事件前にも山岸さんの自宅に侵入していた疑いが持たれているが、公務員として真面目に勤務していながら、なぜこんなことになったのか。尾本容疑者は外国為替証拠金取引(FX)の投資に失敗するなどして、500万円ほどの借金を抱えていたとみられる。経済部記者が解説する。
「国が投資を推奨するようになってから、投資が一般の人にとっても身近なものになりました。最初は投資信託や国債など、リスクがあまりない投資商品から入ったとしても、どんどん敷居が低くなっていき、ギャンブル的要素の強い危険な商品にまで手を出すようになる。誰にでも十分に考えられることです」
高額なお金を動かす不動産投資にしても、セミナーには20代、30代の若い世代が数多く出席しているといい、
「給料が上がらず、将来の年金も全く期待できない若者たちにとって、投資は強い関心事です。ただ、知識がないまま簡単に手を出せる今の状況は、危険といえます。まっとうな生活を送っていたはずの一般人が大失敗し、破綻していく例はこの先、増えていくでしょう」(前出・経済部記者)
借金を抱えたら少額のうちに軌道修正しないと、どんどん額が膨らみ、行き着く先は自己破産か、やぶれかぶれの犯罪行為か。恐ろしい世の中になってしまわぬといいのだが。