21年3月場所中に引退を発表した第71代横綱・鶴竜親方(37)。6月3日に待望の「断髪披露大相撲」を控えているが、意外にも角界は祝福ムード一色とはいかない様子。そこには暗雲たる事情が見え隠れしていた。
「開催の1カ月前にチケットノルマを課せられて迷惑していますよ」
と苦虫を噛み潰したような表情で声を荒らげるのはさる若手関取である。その通達が出されたのは、5月2日に両国国技館で開かれた「力士会」でのこと。若手関取が続ける。
「十両以上の力士に、鶴竜親方の断髪式のチケットを1升ずつ捌くよう命じられたんです。1升に4人が座る席なので、1枚9500円のチケットを4枚も売らなきゃならない。通常、仲のいい幕内力士の断髪式でご祝儀代わりに4~5升購入することはあっても、横綱クラスのチケットは購入するどころか、プレミア化して入手困難になるもの。引退して2年以上が経過していてファンの熱も冷めてしまったのか、どうもチケットの売れ行きが芳しくないらしい」
現役時代には横綱在位41場所、幕内優勝6回を記録。日馬富士(39)や白鵬(38)=宮城野親方=とともにモンゴル人力士の黄金期を築いた実力者だが、コロナ禍の影響もあって、新しい門出のタイミングを逸してしまったようだ。前述のチケット問題について、角界関係者が耳打ちする。
「鶴竜親方の師匠である陸奥親方(64)=元大関霧島=の鶴の一声で“ノルマ”が発令されたようです。『事業部長』という相撲協会ナンバー2の地位に就き、トップの八角理事長(59)=元横綱北勝海=とも気心の知れた関係だけに、ある程度は好き勝手できる立場ですから」
引退興行は後援会や当人が主催し、会場となる国技館も格安料金で使用できるため、引退した力士にとっては大きな収入源となる。
「鶴竜が横綱の特例で『鶴竜親方』として相撲協会に残れるのは25年まで。それまで年寄名跡を取得する必要があったのですが、すでに『音羽山』という年寄名跡を取得。その際に億単位のカネを工面して懐がさびしい。愛弟子のため少しでも“お米”を稼がせたい陸奥親方の親心とも言えますが、他の部屋の関取に押しつけるようでは、お祝いムードに水を差すことにならないか」(前出・角界関係者)
加えて、鶴竜親方が大枚をはたいて取得した年寄名跡はいわくつきのようで‥‥。
「逸ノ城(30)の電撃引退の原因を作ったのが『音羽山』ですよ。実は湊親方(54)=元前頭湊富士=を通じて、『音羽山』の取得に動いていたんだとか。ところが、鶴竜親方に取られたことで断念。さらに、その渦中で師弟間の金銭トラブルも生じていて、裁判沙汰になるのも“待ったなし”の状態だとか。いずれにしても、同胞が角界を去るキッカケを作ってしまった鶴竜親方としては後味の悪い結果になってしまった」(前出・角界関係者)
とはいえ、鶴竜親方も順風満帆とは言えないようで、
「来年4月に定年を迎える師匠と年寄名跡を交換して部屋を継承するのが既定路線です。協会の規定で、定年を過ぎた親方が部屋を持つことは許されませんからね。それでも、部屋のイニシアチブは師匠が握ることになるでしょう。というのも、部屋の土地家屋や後援会の中枢にいるタニマチは師匠の所有物にほかならない。『参与』として残る5年間を耐えるしかありません」(前出・角界関係者)
5月9日には元所属力士の暴力行為が発覚し、批判の矢面に立たされた陸奥親方。とても、断髪式どころではないはずだが‥‥。