「彼に喜んでもらえるように、これから花嫁修業をきちんとやります」
1993年1月26日、テレビ朝日六本木放送センターで50人の報道陣を前に、頬を赤らめながら宅麻伸との結婚を報告した賀来千香子。
2人はこの5年前に知り合い、恋人役で共演してから交際が始まったというが、
「とても安心できる人です。男らしくて私よりひと回りもふた回りも大きい人です。私を引っ張ってくれるし、とても尊敬できる人です」
会見中には感極まり、涙する場面も。
都内のホテルで4月18日に結納を交わした2人は再び会見に臨んだのだが、賀来の左手薬指には、宅麻いわく「給料を前借して買いました」という2.5カラットのダイヤが輝き、賀来も「100点満点に花マルが付くくらい」とこれ以上ないほどの笑みを見せたのだった。
ところが、そんな幸せに冷や水を浴びせかけたのが、「フォーカス」が報じた「宅麻に8年越しの恋人がいる」とのスクープ記事だった。
相手の女性は、地方のラジオ局でワイド番組を担当するタレント。宅麻の婚約会見を見て、二股だったことに愕然としたという。
このスキャンダル報道を受けて、神奈川県川崎市のスタジオで囲み取材に答えた賀来は、こう言った。
「あの年で何もなかったら『冬彦さん』。同じ女性として気持ちはわかりますし、女性がいたことは認めます。ただ、私は誠意がない人だなんて思いません。私は彼を信じています」
涙ながらに擁護したのだった。
10月4日、仕事先のスタジオで緊急会見を開いた宅麻は、
「5~6年付き合った彼女ですが、年に2度くらいしか会っていなかったし、僕は昨年、終わっていると…。優柔不断な僕の態度がいけなかった。彼女に対しては今後、誠意をもって、理解してもらえるよう努力していくつもりです。年齢的にも過去に女性がいなかったと言えば、ウソになりますが、過去のことは彼女(賀来)に話してあります。ただ、結婚を意識したのは賀来千香子たった一人です」
なんとも苦しい弁明に終始することになったのである。
「もうひとりの女性」に対し「誠意を見せる」と表明した宅麻だったが、その年の暮れになっても「誠意がない」として、女性が再告発。賀来は婚約破棄せず、2人は結婚したが、のちに女性に宅麻が慰謝料を払ったことが賀来の耳に入り、「大喧嘩になった」との報道もあった。
とはいえ、テレビ番組などで夫婦仲の良さを語っていたこともあり、2010年11月には「プラチナ夫婦アワード」を受賞。
ところが、受賞から1年3カ月後の12年2月に「夫婦として応援してくださった方々には心よりお詫び申し上げます」との謝罪コメントを残し、結婚19年目にして離婚を発表、周囲を驚かせた。
授賞式で妻を「とにかく曇りがない。家に帰れば青空です」と語った夫。しかし、雨降って地は固まるものだ。この夫妻にも時には、雨や曇の日が必要だったのかもしれない。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。