メジャーリーグのエンゼルスが、今オフFAとなる大谷翔平を引き留めるため、前代未聞となる「共同オーナー権」を与えるのではないかとの情報が、米球界を駆け巡っている。
今季も二刀流として順調に成績を積み上げている大谷の周囲は騒がしい。日本でもおなじみの米スポーツ専門放送局「ESPN」は、球界関係者らにアンケートを実施。その結果、FA権を行使すれば12年6億ドル(約840億円)での契約もありうる、との結果を公表した。
これだけの金額を支払えるのはヤンキースやメッツ、ドジャース、パドレスといった潤沢な資金を持つ球団しかない。そのため米国内では、移籍はこれらの球団に絞られたと報道されることが多く、エンゼルスはマネーゲームでは分が悪いとされている。ところが「ウルトラC」を用意し、残留交渉に臨むのでは、との説が浮上しているのだ。
メジャーリーグ事情に詳しいスポーツジャーナリストが明かす。
「大谷に球団の共同オーナー権を与えるというものです。『フォーブス』誌によると、エンゼルスの価値は30球団中7位の27億ドル(約3780億円)ですからね。大谷にとっても悪い話ではない」
二刀流で成功を収めている大谷にとって、次のステージは本塁打王やサイ・ヤング賞といった個人タイトルの獲得に加え、ワールドシリーズ制覇がある。だが、現在のエンゼルスのアルテ・モレノ・オーナーは大富豪にもかかわらず、ぜいたく税の支払いを渋り、補強にあまり熱心ではない。 そのため大谷には、チーム作りがうまくいかない不満があるとされている。共同オーナーとなれば、ある程度は強権を発動でき、その不満を解消できる可能性が出てくる。
「国税は最大39.6%、これに地方税が数%。代理人に手数料を支払えば、手元に残る年俸は約半分です。6億ドルなら3億ドル(約420億円)も残る計算ですが、趣味は野球、仕事も野球の大谷は、そんな数字にこだわりなどないと思います。実入りは少なくなっても、強いチーム作りができる共同オーナー就任は魅力的なはずですが…」(前出・スポーツライター)
デレク・ジーター氏やケン・グリフィー・ジュニア氏のようなレジェンド選手が引退後、球団の共同オーナーに加わった例はある。だが、現役選手との兼務となれは、異例中の異例。まさに歴史を塗り替え続ける大谷にふさわしいかもしれない。
(阿部勝彦)