手柄は全て自分のものに
岡崎ヘッドが09年から務めた二軍監督時代は原監督も信頼していたというが、こうまで清武代表にベッタリでコソコソ動き回られてはおもしろいはずもない。
「だから原監督は、今回の岡崎ヘッド留任にしぶしぶ了承はしましたが、あとになって清武代表が岡崎ヘッドを『ポスト原』にしようとしていることまで知ってしまい、11月4日の今季終了報告会で渡辺会長にそれを伝えたそうです。すると渡辺会長が過敏に反応した。というのも、渡辺会長は原監督の次には中日の落合博満監督(57)を招聘したいと考えていた。最高決定事項の監督人事に関して、清武代表が独断で動いていたことが許せなかったのでしょう」(球界関係者)
その結果、渡辺会長の「俺は何にも報告は聞いていない」発言につながったようなのだ。
ところで、原監督と清武代表の関係が怪しくなった背景はもっと根が深い。前出・球界関係者が言う。
「原監督が05年オフに第2次政権を引き受けたのは、第1次政権ではもらえなかった編成権を認めてくれたからです。実際に、最初は清武代表と相談しながら補強や組閣をしていた。ところが07~09年にリーグ3連覇を達成したあたりから、清武代表が権限を強めて増長し、原監督に相談することなく、勝手に選手補強に乗り出すようになったといいます。GMに就任した今季、その傾向がより強くなったのです」
あまつさえ、手柄は全て自分のものと思っていたフシさえあるというのだ。
「育成選手制度創設に動いたことが誇りで、『自分が育成してきた選手が活躍したおかげ』などと、自分が選手を育てたかのような物言いの時もあった。よく言うのが『フロントの力』です。ところが、自身が獲得した選手が活躍しなくても責任を取ろうとしないばかりか、『チームが弱い』などと言い放つ始末」(前出・スポーツライター)
今年、原監督が知らないうちに清武代表が獲得してきた外国人選手は、バニスター(30)、アルバラデホ(29)、トーレス(29)、ライアル(28)、フィールズ(28)など“ハズレ”ばかり。失敗は明らかである。
「勝手に獲ってきて、獲得したからには使え、では現場は冷ややかになるばかりです。シーズン終盤に原監督がフィールズやライアルを起用した際には、ダメさかげんを公にして清武代表のせいであることを訴えたかったのではないか、とさえささやかれました。それなのに清武代表は『俺がこれだけやっているのに』という勘違いした態度です。首脳陣の中から、『素人GMが!』の声も上がっていたほど嫌われている」(前出・球団関係者)
「いつまでいるんだよ!」
先にも少し触れたが、清武代表は育成枠上がりの山口鉄也(28)や松本哲也(27)が活躍したことで、「育成の巨人」を自負し、誇りにしてきた。
「清武代表は巨人に『ベースボールオペレーションシステム』を導入し、選手の能力を数値化して把握していることをしきりに話しますが、あれは日本ハムのやり方をマネたものです。育成に力を入れだしたのもその一環。日本ハムに頭を下げて、教えを請うたシステムなのに、今では自分の手柄のように話している。日本ハムの幹部の中からはそれを揶揄する声も出ています。一方で、一目置く日本ハムの選手を特別視しているのか、近年、MICHEAL(35)、藤井秀悟(34)、高橋信二(33)など多くの選手を日本ハムから獲得してきました。ある日本ハムの幹部は『押しつければ獲ってくれる』と笑ってましたよ」(前出・スポーツライター)
選手を見極める力はまるでなし。これでは現場は困惑するばかりだろう。スポーツ紙デスクも言う。
「結局、育成などと言ってもやりっぱなし。結果が出なければ『現場の指導が悪い』です。一部のコーチは『そう言われると困る』と話していました」
一事が万事、そんな調子だから、選手たちからも総スカンだという。先の球界関係者が明かす。
「V逸という現実について、『あの人が責任を取るべきでしょう』と口にする選手は多い。増長した去年あたりから『あの人、いつ辞めるんですか?』と報道陣に逆取材したり、『アイツ、いつまでいるんだよ!』と吐き捨てたりする選手が増えました」
そんな中、当の清武代表の“自爆テロ”が発生。失脚の可能性が出てきたことで、チーム内でも騒がしくなっているようだ。
「理不尽な上司に毅然と立ち向かうかのような構図を作り、世論を味方につけようとした会見に、『やりそうなやり口だよ』とか『ヒーローになろうとしやがって』と非難が集中しました。ある主力選手は『このままいなくなってくれ!』と心から願うように言っていた」(前出・球界関係者)
「出禁」乱発で記者を統制
清武代表が読売新聞の社会部に所属していた時代は社会的関心の高いスクープを連発し、「敏腕記者」として知られていたという。
今でも折に触れて、自分からその話題を持ち出すそうだ。骨太な取材をしてきた過去を自慢したかったのだろう。
「取材に関してはプライドがあったはずなのに、自分が報道陣に対応すると真逆です。都合の悪い記事を書かれたら、書いた記者を容赦なく面罵する。特にフロントの失態を指摘する記事には敏感で、露骨に怒りをあらわにします」(前出・スポーツ紙デスク)
その結果、記事を掲載したスポーツ紙を出入り禁止とし、試合後の取材ブースや球団事務所に入れなくする。もちろん写真撮影も許さない。
「堀内政権時代の04~05年はチーム状態が悪く、スポーツ紙が書きたい放題だった。それを引き締めるために清武代表は、第2次原政権がスタートした06~07年頃に『出禁』を乱発したんです。多くの記者がそれで萎縮して、批判的な記事は減っていきました。だから最近は出禁も少ないのですが、発動される時は大した内容でもないのに怒って、『どうなるか、わかってんのか!』ですよ」(前出・球界関係者)
出禁の乱発は、清武代表が権力を握るのに好都合だったようだ。ラミレス(37)が巨人に移籍してきた07年オフ、それを象徴するような一件があったという。
「とあるスポーツ紙がラミレスの巨人入りをスッパ抜いたんです。ところが発表までにはまだ時間があり、その段階で『ウソを書いた』とそのスポーツ紙を出禁にした。これに懲りたその社は、担当デスクが交代するや清武代表にすり寄ってベッタリとなり、フロント主導で上がってくるネタをスクープするようになったんです。逆に、清武代表がその社を利用することもある。昨年にはドラフト直前、澤村拓一(23)について、『巨人以外ならメジャー行き』を示唆する記事を書かせたようです。他球団を牽制したことで、巨人は澤村を一本釣りできたと言われる」(前出・スポーツライター)
渡辺会長を「独裁者」と糾弾する以前に、清武代表のほうこそ独裁ぶりを発揮し続けてきたのである。
くだんの会見後にも、こんなことがあった。
「ある週刊誌が清武代表のロングインタビューをとったんです。清武サイドの弁護士にも内容を確認してもらい、OKが出た。ところが、締め切り直前になって突然、清武代表が日和りだして、『友人が語ったことにしてくれ』と言いだした。それを拒否すると、『もうお前のとことのつきあいは終わりだ』と激ギレし、結局、掲載は見送られました」(出版関係者)
一連のクーデターについて清武代表は、「ファンを愛しているからやった」と言うが、これまでの言動を見るにつけ、みずからの保身のために奔走しているとしか思えないのである。あげくに、同志だと思っていた桃井オーナーからも「断じて許せない」と断罪された。
原監督、選手、フロント、記者‥‥完全に総スカン状態の清武代表。渡辺会長も反論コメントで「GM就任後、さらに尊大になったと悪評が立っている」と語ったように、こうした“告発”の声は耳に入っていたようである。
今や、清武代表の周りは完全に敵だらけとなってしまった。
プロ野球評論家の江本孟紀氏が語る。
「日本シリーズが始まる前日に、内輪の話を持ち出して球界を混乱させるとはバカげています。野球を愛するというならやるべきじゃなかったですね」
本当に球界のためを思うなら、潔く身を引くべきだろう。