記者座談会
金満補強・堀内暗黒時代・地上波が撤退…
松井引き留め失敗で始まった「ロスト10年」
清武代表のご乱心に端を発した巨人のお家騒動が収まらない。とはいえ、ここ10年の巨人は迷走を続けてきたのである。チームの顔だった松井秀喜がメジャーに去って以来、失速し続けた10年間を記者座談会で振り返ろう。
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A(スポーツ紙デスク) 02年に就任1年目の原監督がみごとに日本一を達成した。ところがそのオフに、4番・松井がFA宣言して渡米してしまいました。確かに、あそこから巨人の歯車は狂い始めたね。
B(ベテラン記者) 当初、松井がなかなか態度を表明しないから、フロントの一部は悩んでいるんだと思っていた。残留もあると踏んでいたんだ。ところが、松井の気持ちは固まっていて、単に言いだすタイミングを探っているだけだった。それなのに一部のフロントは勘違いしていたから、FAで出ると知って「えっ?」となったんだよね。
C(スポーツライター) それは原監督も同様だったよ。シーズン中から長嶋さんも交えて、3人で会食して松井の気持ちを探っていたんだけど、松井は何も語らず、原監督は「残る」と信じていたそうだ。長嶋さんが「あれは出るぞ」と松井の気持ちに気づいて予言していたにもかかわらずですよ。
A 慌ててヤクルトからペタジーニを強奪したのが金満補強の再開で、4年連続V逸の始まりだった。
D(遊軍記者) すでにチームには清原と江藤がいて、翌年のオフにはローズと小久保まで獲るんだから、他球団の4番が勢ぞろいだよ。並の指揮官では操縦できないメンツがそろった。
A 並行して03年オフに原監督が辞任して、会見で「青天の霹靂」との言葉を吐いた堀内監督が誕生すると、直後に川相(現二軍監督)が引退を撤回して中日に移籍した。
B あれは、巨人の影響力が低下したことを証明する“事件”だったよ。かつてFAで横浜に移籍した駒田は「俺だって将来的には巨人でコーチがしたい。だから巨人とケンカ別れはできない」と語っていたものです。巨人にいれば生活は安泰。そういう時代だった。ところが川相はケンカを売ったんですから。
C 堀内政権はまさに暗黒時代だったよね。起用を巡って、清原との確執ばかりがクローズアップされた。ハイタッチ拒否事件や、清原が残留を直訴して滝鼻オーナーに直談判しにいく前代未聞の騒動もあったね。
B 結果の出せない堀内監督は記者が囲んでも「どうせ俺なんか‥‥」と周囲を暗くする一方だった。だからといって04年オフに「チームを明るくしてもらおう」と安易に中畑清助監督案が出たのはアホらしかったな。堀内監督は人あたりで誤解される面もありました。でも、監督賞として金一封のみならず地元・山梨の野菜を渡すなんて心遣いもあったのに、それを選手たちは球場に放置して帰っていた。
「巨人もここまで落ちたか」
A 04年オフといえば、「一場問題」が発覚して、ナベツネさんがオーナーを辞任した。
C でも「俺は退いた」と言ってコメントしなくなった期間はごくわずか。ナベツネさんの影響力は結局変わらずでした(笑)。
A 05年あたりから、観客動員の落ち込みや巨人戦の視聴率低下も顕著になってきた。絶頂期には選手やOBでもチケットの入手が困難だったのに、この頃から知り合いにチケットの入手を頼まれることすら減ったな。当日券で買って、余裕で入れるんだからね。日テレは中継の延長を中止にするし、以後、地上波の放映は激減していくことになった。
D 人気回復の起爆剤か、05年オフには星野仙一監督の招聘に動いたが、OBの反発もあって断念。結局、原監督の再登板となりました。
B 相変わらず、毎年のように大型補強を繰り返したね。05年オフにパウエル、豊田、野口、イ・スンヨプを獲り、06年オフには谷や小笠原を、07年オフにはクルーン、ラミレス、グライシンガーと、もう乱獲状態でした(笑)。
C それだけかき集めておきながら、スタメンに小関(現二軍外野守備走塁コーチ)や小坂など他球団の控えクラスが名を連ねることもあり、巨人もここまで落ちたかと正直、思ったね。
D 07年には、久々に優勝するも、この年から導入されたCSで中日に3連敗。つくづくツキのないチームになっていました。
A それでも原監督は09年までに3連覇を達成する実績を残した。WBCで世界も制したし、名将と言えるんじゃないか。
B う~ん、原監督は今でも父・貢さんから戦術のアドバイスを受けていると聞くよ。プロがアマチュアに聞くなって(笑)。
C 松井の話に戻るけど、看板選手の海外流出も激しくなった。桑田は例外としても、上原や高橋尚成も出て行ったね。ただし巨人は盟主の意地として、ポスティングシステムでの移籍は認めていません。その慣例まで崩されちゃったら、巨人もおしまいかな。でも、それはさすがにないだろう。
B わからないよ。解任が時間の問題のGMに編成を任せるような球団になっちゃったんだからね(笑)。