反省なくして進歩なし──。パナソニックの創業者・松下幸之助氏が、失敗を分析してのちの成長につなげることを説いた格言である。何かと猛省を促したいプロ野球界にピッタリの言葉だが、果たしてみずからを戒める人間がいるかどうか‥‥。セ・パ交流戦が一段落した節目に、ビーンボールさながらの怒号が飛び交うベンチ裏をレポートする。
4月、5月に怒濤の快進撃を見せて、リーグ戦中断時点までに貯金17を蓄えていた阪神。そのまま首位独走かと思いきや、交流戦でよもやの失速を見せている。スポーツ紙デスクが解説する。
「5月31日の西武戦を境にチームの勢いが萎みました。球団新記録の月間20勝を目前にして完封負け。翌日の試合も落として、今季パ・リーグで低迷する西武に負け越してしまいました。次カードのロッテ戦こそ勝ち越しましたが、続く楽天、日本ハム、オリックスに3カード連続で1勝2敗。交流戦全日程を消化してもセ・リーグの1位に変わりはありませんが、早くも球団幹部の間では、『(08年に13ゲーム差を逆転された)メークレジェンドが脳裏にチラつく‥‥』と悪夢の再来を危ぶむ声が絶えません」
そんな体たらくにイライラを隠せないのは岡田彰布監督(65)だ。さる在阪メディア関係者は「“どんでん”の悪態が止まらへん」と前置きしてタメ息交じりにこう続ける。
「15日に逆転を許す2ホーマーを打たれた守護神・湯浅京己(23)に『これはもう投げさせられへんよ』とブチ切れて2軍降格を指示していた。9日に先発したドラフト6位左腕・富田蓮(21)に対しても、『リズムが悪い』『何をしてんのかわからへん』と苦言を連発。中でも“イラチ”が止まらんのが、6月の打率が1割台の佐藤輝明(24)やな。13日に代打で凡退した時など『ゲームの中で、よくなるいうのは全然、見とったらないもんなあ』とバッサリ吐き捨てとったわ」
そのほとんどが指揮官の口から選手たちの耳に入るわけではないようで、
「基本的に叱責はメディアを通じての“遠隔口撃”。選手たちはネットニュースで監督の心の内を知らされるわけよ。どちらかと言えば選手を過保護にかばってきた矢野燿大前監督(54)の頃とはガラッと環境が変わったわ。アマチュア時代から厳しく指導されることのなかった佐藤や、もともとメンタルの弱かった青柳晃洋(29)は心がヘトヘトやで。それでも、岡田監督は『俺は“学校の先生”やないからな』と前政権を踏襲する気はさらさらない」(在阪メディア関係者)
もちろん、怒りの矛先を向けられるのは選手だけではない。
「コーチにも八つ当たりまがいの怒りがブチまけられている。みずからが招へいした水口栄二打撃コーチ(54)や馬場敏史内野守備走塁コーチ(58)は例外で、球団の息がかかった今岡真訪打撃コーチ(48)や投手コーチたちが、理詰めで正論を並べ立てられる“ロジハラ”の被害をしばしば受けています。うなだれている光景を見ると、首位のチームとは思えないほどの意気消沈ぶり。思えば、谷本修オーナー代行(58)は岡田監督の就任が決まる直前に、この事態を危惧して『辞表覚悟で止めたる』と周囲に漏らしていた。まさに、その慧眼どおりのアレルギー反応が出ている」(スポーツ紙デスク)
前半戦も終わらないうちに落伍者が続出。果たして、無事にシーズンを完走できるのだろうか。