サミット終了後、永田町で吹き始めた「解散風」。その風速は岸田文雄総理(65)のひと言で強くなったり、弱くなったり‥‥。あげくは解散見送りになって、そのたびに、センセイ方は右往左往。この騒動で浮き彫りになったものとは?
「情勢をよく見極めたい」
6月13日の会見で、岸田総理はこう言って、不敵にも会期末解散に含みを持たせた。ところが、舌の根も乾かぬ15日に「今国会での解散はない」とみずから発言を翻す。一説には自民党幹部が軒並み解散に反対したという。それにしても、この間の永田町は「解散風」で騒がしかった。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が解説する。
「岸田総理は増額した防衛費の財源問題を、早々に来年度以降に先送りしました。選挙前に国民の負担増に関する議論をすれば、勝てる選挙も勝てない。この時点で、今年中に解散総選挙が行われる可能性が高まったわけです。ただ、自民党の選対の動きや総理周辺を見るかぎり、私は会期末の解散はないと見ていました。それなのに、『解散風』が吹き荒れたのは、早期の総選挙に賛成派と反対派の両方がざわついたから。いわば、総理以外がつむじ風を起こしていたのです」
反対派の急先鋒とされるのが、連立与党のパートナーである公明党だ。4月の統一地方選では思うような結果を残せず、支持母体の創価学会の動員力低下が指摘されていた。そんな中、総選挙などやりたくはない。そこで乾坤一擲、公明党は自民党に喧嘩を売った。衆院選小選挙区の「10増10減」により、新設された「東京28区を公明党に譲れ」と。ところが、自民は譲る気配なく、東京での自公の選挙協力は解消されることに。だが、この影響をモロに被るのが自民党自身だ。政治ジャーナリストの安積明子氏によると、
「前回の衆院選で辛勝だった小倉將信こども政策担当大臣(東京23区)、参院から東京7区に鞍替えする丸川珠代元五輪相は、かなりの苦戦が予想されます」
大臣クラスが落選危機とは、ただごとではない。対する野党は攻勢を強めればいいものを、立憲民主党と日本維新の会がバチバチの“抗争状態”となっている。
立憲が解散の大義になりうる内閣不信任案提出を示唆すれば、維新はお決まりの提出劇には「飽き飽きだ」と一刀両断。立憲が「さすが御用野党」と皮肉っても、どこ吹く風の状態だ。統一地方選で躍進し、次期衆院選で野党第一党を狙う維新だけに強気一辺倒かと思いきや、どうも本音は違うようだ。政治部記者が話す。
「早期の総選挙は避けたいのが本音です。維新は約130人の候補者を予定していますが、いわゆる“身体検査”がどうにも間に合いそうにないのです」
確かに、これまでの問題候補を選ぶ目は節穴かと疑いたくなる。梅村みずほ参院議員は入管施設で亡くなったスリランカ人女性に対し「ハンスト死の可能性あり」と主張。誰に注意されようが発言を繰り返し、党員資格停止6カ月の処分を食らった。質疑でディナーショーの宣伝をした中条きよし参院議員は年金未払いが露呈。さらに、大阪ではセクハラ・ストーカー疑惑が浮上した府議団代表が除名になったばかりである。
「議員だけではありません。公設秘書が殺人未遂で逮捕されたり、維新はアウトロー集団かという状態。馬場伸幸代表が新人向け研修会で、『社会人としてのマナーの徹底を』と呼びかけたくらいですから、今すぐ総選挙となれば、不祥事議員を量産する危機だったのです」(前出・政治部記者)
解散風で浮き彫りになったのは、各政党のボロばかり。なんとも笑えないオチの連続で‥‥。