台湾問題に絡み、日本に対する中国の恫喝がエスカレートしている。そのため、保守派議員などから「岸田政権がナメられている証だ」「毅然とした姿勢を示すことができないなら、首相辞任にも匹敵する」との政権批判が飛び出しているのだ。
中国の恫喝のひとつが、NATO(北大西洋条約機構)の連絡事務所が東京に設置される方向で調整が進められていることに対する、過剰な反応だ。外務省関係者が解説する。
「5月9日、アメリカのワシントンにあるナショナルプレスクラブで、冨田浩司駐米大使がNATO東京事務所の調整事情を明らかにしました。すると『人民日報』傘下の『環球時報』が『日本に開設するアジア初のNATO事務所は、アジアに突き刺さる毒々しい棘になる』と、最大級の悪意を込めた言葉で牽制したのです」
保守派国会議員が怒りをブチまける。
「ロシアが国境を接する国々によるNATO加盟の動きを嫌うのと、全く同じ。ミニNATOのようなものが東京に設置されれば、台湾侵攻を着々と準備する習近平国家主席にとっては目の上のたんこぶとなり、『力による現状変更』の足かせになる。そのため(駐米大使に)発信させたのだろうが、日本が何を設置しようが、干渉される筋合いはない。そもそも日本はNATO加盟諸国同様、ロシアと国境を接する国なんだし」
中国が強烈な言葉で日本を恫喝するのはもちろん、今回に限った話ではない。4月28日、呉江浩駐日大使は着任して初の記者会見で、日本が台湾問題を安全保障政策と結び付ければ「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」などとトンデモ発言をしている。これにも前出の保守派議員は怒り心頭だ。
「林芳正外相は『極めて不適切』として、外交ルートを通じて中国に厳重抗議したのですが、台湾問題に首を突っ込めば日本も攻撃対象になると言わんばかりの態度を、口頭の抗議だけで済ませるのはユルすぎる。国外追放にも匹敵する、ゆゆしき発言だ」
事実、カナダでは中国・新疆ウィグル自治区の人権問題を批判する国会議員に圧力をかけようとした、在トロント中国外交官を追放するなど、毅然とした姿勢を示している。
「対中国でしっかりとしたとした姿勢を示せば、北方四島や漁業交渉問題などで懸案を抱えるロシアに対しても、強く牽制できる。手ぬるい岸田首相がそのあたりをG7でどこまでアピールできるか、見ものだ」(前出・保守派議員)
G7サミットの対中抑止力強化の協議で、岸田首相が強力なリーダーシップを見せられないなら、相当な突き上げを食らうのは間違いない。
(田村建光)