松永氏は、大谷が今後も好調を維持できるかどうかは、日常生活をどう過ごすかにかかっている、と言う。
「食事や睡眠の管理で、試合でやれることは変わってきます。大谷も渡米後、明らかに体がサイズアップしましたよね? 考えて行動することで自分の体が変わっていくのが楽しいと感じているはず」
大谷の野球に対するストイックさはよく知られるところで、松永氏は「それこそが大谷のいちばんのストロングポイント」と断言してこう続ける。
「私の時代は『試合後は浴びるように酒を飲むもんだ』と先輩方に教わりましたから、大谷ほどストイックにはなれませんでした(苦笑)。彼は酒も飲まないし、街にも出ない。すべてを野球に捧げています。昨日できなかったことが次の日できるようになるために、好きなものを食べたい、遊びたい、という気持ちを消すのは当たり前。苦痛に感じることもなく、極めて普通のこととして認識している。だからこそ、プレーで世界中を沸かせることができるのだと思います」
常に最善に向かって努力を止めない。そんな姿勢を象徴するように、今季開幕後、大谷はバッティングフォームを少し改造していた。従来よりも腰の位置を若干落とし、より全身のパワーがバットに伝わりやすくなったという。
「改良前と改良後を比較すると、17打席に1本だった本塁打が9打席に1本出るようになりました。本塁打量産の陰には、こうした日々の進化があります」(友成氏)
もはや三冠王は目の前か!?と思いたくもなるが懸念材料もなくはない。松永氏は、次のように指摘する。
「本人の投球もスイーパーが5割を占めるように、今のメジャーは投手がストレートを見せ球に変化球でしとめる野球が主流です。大谷のバッティングもそれに対応して、変化球をどう打つか、というスタイル。だから実はストレートには差し込まれることも多く、あまり打てていないんです。投球のトレンドがガラッと一変するとは思えないので、そこまで心配はしていないのですが‥‥」
一方で友成氏は、大谷がいまだ克服していない「弱点」を挙げる。
「MVPを獲った21年も、そして昨季も後半戦で本塁打数が減ったり、投手としての登板をなくしたりと、明らかに成績を落としています。特に今年は開幕直前にWBCもあり、例年より調整が早まっている。そこに不安は残りますね」
いずれにせよ、今後も大谷から目が離せないことは間違いないが、3度の三冠王を獲得した落合博満氏は、異国の地で戦う若き天才にこんなエールを送っている。
「(日本人初のMLB3年連続20本塁打は)あれだけの才能があれば、やって当然。(三冠王も)可能性あると思うよ」(YouTube「落合博満のオレ流チャンネル」より)
これまでも数々の常識を覆してきた大谷だけに、二刀流でのメジャー三冠王を期待しようではないか。