人類が電波を利用するようになって、100年ほどが経過したとされる。オーストラリアにあるパークス天文台の電波望遠鏡が、太陽系から最も近い恒星として知られるケンタウルス座のプロキシマ・ケンタウリを観測中、謎の信号を確認したのは、2019年4月だった。
この信号は5時間以上続き、しかも望遠鏡をこの星に向けた時に限って届くことから、研究チームは「人工衛星や飛行機が発生源とは考えにくく、宇宙文明からの信号である可能性も考えられる」と発表。地元メディアを含め、ニューヨーク・タイムズ紙なども「ETからの電話か」と報じたのである。
それから4年後の今年2月、今度は天体物理学の学術雑誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」(2月6日付)に「携帯電話の基地局から漏れ出した電波が、地球人を見つけ出すカギになる可能性がある」との記事が掲載され、世界の天文学者の間で大きな話題になった。サイエンスライターが解説する。
「記事を執筆したマンチェスター大学のマイク・ギャレット教授によれば、現在、地球上では携帯電話の基地局をはじめ、通信衛星、ラジオ、インターネット等々、様々な電波が使われているのですが、それらがどの程度漏れ出し、どの程度の距離で検出されているのかを、実際にシミュレーションしたというんです。太陽系外には地球の数倍程度の質量を持ち、岩石や金属などを主成分とする惑星、つまりスーパーアース(地球型惑星)が存在しています。仮に地球から6光年先のバーナード星にそういった知的生命体が存在した場合、携帯電話の基地局から漏れ出た通信データをエイリアンが傍受することも、物理的には可能だということです」
研究チームは現在、個々の携帯端末をはじめ、軍事レーダーやデジタル放送、Wi-Fiネットワークなど電波源の分析も進めていきたい意向で、ギャレット教授らは鼻息荒くこう言う。
「テレビやラジオなどの強力な送信機は減少傾向にあるものの、今や世界中でインターネットによる通信網が張り巡らされている。ひとつひとつの出力は微弱ながら、それが数十億、数百億も集まれば、とてつもなく巨大な電波となる。地球からの技術文明サインとして、キャッチされている可能性は高い」
現在、太陽以外の恒星の周りを回る「系外惑星」は、発見されているものだけで4800個超。もしもエイリアンに携帯電話のデータがダダ漏れだったら…。いったい何が起こるのか。
(ジョン・ドゥ)