昨今、何かと話題のChatGPT。これはユーザーが入力したテキストに対し、自然な言語処理を行うAIだが、その精度および柔軟性が突出していることから、社会を変革させる可能性が示唆されている。実は昨今、世界の言語学者らがChatGPTを用いて解読に挑んでいると言われるのが、世界最大の奇書「ヴォイニッチ手稿」なのである。
この手稿は、1912年にポーランド系アメリカ人の古書収集家、ウィルフリッド・ヴォイニッチにより、イタリア・ローマ近郊にあるイエズス会系大学で発見された、250ページに及ぶ謎の文書だ。未知の文字や奇妙な絵などが登場するものだが、古文書に詳しいジャーナリストによれば、
「数々の天才たちがこの手稿の解読に挑んだものの、ことごとく失敗しました。その中には、ナチスのエニグマを解読したことで知られる、英ブレッチリー・パークの暗号解読者で『史上最高の頭脳』と謳われたアラン・チューリングもいたのだとか。しかし、その頭脳を持ってしても、まったく歯が立たなかったといいます。もしChatGTPにより解き明かされることになれば、世紀の偉業となるのは確実です」
「ヴォイニッチ手稿」は放射性炭素年代測定法の分析により、1404年から1438年の間に書かれた可能性があるということ以外、誰がいつ、何の目的で書いたものなのか等々が、全く解明されておらず、
「それどころか、使用されている言語がなんなのか、それすらわかっていません。そのため、ラテン語の一種だとする説から、数百の語源からなるシナ・チベット語族に至るまで諸説ある。近年ではブリストル大学の言語学者が、言語は中世の地中海地域で普遍的に使われ、公式に記録が残らず絶滅した『ロマンス祖語』と主張しました。この説も含め、全てが決め手に欠くため、いまだわかっていないのが現状です」(前出・古文書に詳しいジャーナリスト)
さらに手稿には植物、星、惑星、沐浴する女性といったイラストが数多く描かれており、言語学者からは「そもそもこれは暗号文ではなく、全体が何かの意味をなすメッセージなのではないか」との分析も出ている。
「このままAIが進化すれば、あるいは解読に成功する日が来るかもしれません。そのためにはまず、コンピュータに構文を理解させ、単語の意図を把握させ、その上でヴォイニッチ手稿を読み込ませる必要がある。つまり、とんでもなく膨大なデータ入力作業は結局、人間がやらなければなりません。その作業ができるかどうかに、未来がかかっているということになりますね」(古書業界関係者)
100年以上の時を経て、世紀の謎が解ける日はやって来るのか、はたまた、またもや白旗が上がるのか。世界中の言語学者が固唾を飲んで、先行きを注視している。
(ジョン・ドゥ)