1日600件しか読めなくなるAPI制限の嵐の中、Twitterで3日間もトレンドワードになっていた言葉がある。「小児科医」だ。
新型コロナが5類になり、3年間の行動制限、マスク着用の反動で、子供達はヘルパンギーナ、RSウイルス、アデノウイルス…舌でも噛みそうな名前のウイルスに、次から次へと感染している。かといって、連日、外来診療に忙殺される小児科医への感謝の言葉が、トレンド入りしたわけではない。「オタ小児科医」というアカウント名の自称医師の暴言が、ユーザーの怒りを買っているのだ。
大炎上したのは、次の投稿だった。
〈なんで「中小企業のしがない財務経理マン」ごときが感染対策について医者に文句垂れてんの? 肩書きで勝負したいなら「中小企業の財務経理マン」の出る幕じゃねえんだよそれくらい理解しろマヌケ〉
日本の医者は、いつから独裁者を気取るようになったのか。老人施設で毎日検査をしては「陽性患者」をでっち上げ、患者1人当たり3万6000円の補助金をもらおうと企む医師たちが使っている新型コロナ検査キットは、日本の中小企業が作っている。子供から大人まで、発熱時にお世話になる解熱鎮痛剤「アセトアミノフェン」も同様だ。
独裁者気取りの医師の高額報酬を払っているのは、悪徳病院理事長ではない。健康保険加入者だ。中でも中小企業が加入する「協会けんぽ」は、国が抱える医療費の赤字まで補填させられている。日本の中小企業が作った医療機材と薬、保険料がなければ、医師なんて「タダの人」以下だ。
前記した通り、小児科では発熱した子供が急増しているため、本物の小児科医なら休日明けの月曜日にTwitter投稿するヒマなどないはずだが。
それでも診療そっちのけで、Twitter医師を産み出す文化圏がある。大阪だ。
オタ小児科医は勤務地を伏せているものの、新型コロナの感染拡大以降、SNSでは大阪の公立病院勤務医が公立病院名や医師実名で攻撃的な投稿を続けている。この3年間、自分がスクリーンショットを撮っているだけでも、次のようなトンデモ暴言を吐いている。
「緊急事態宣言中というのになんでオレ以外に、こんなに地下鉄に乗っているんだ」
「インフラかエッセンシャルワーカーか知らんが、出勤するな。ボケ」
「中国人観光客がやってきてクスリ全部買い上げて行った」
大阪府は6月、新型コロナ無料検査事業をめぐり、約42億円分の不正需給があったと発表したばかり。ワクチン事業でも、請負業者による16億円の不正請求が明らかになっている。大阪府は「医業」を聖域とせず、府内全病院の3年間の「名義貸し」「医師の勤務実態」と患者診察件数を調査するべきだろう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)