ジャニーズ性暴力スキャンダルが、音楽業界の大物に飛び火した。
EXILEや平井堅の楽曲を手掛けてきた音楽プロデューサーの松尾潔氏が、性暴力問題で揺れるジャニーズ事務所に言及したなどを理由に、業務提携先のスマイルカンパニーからマネージメントの年間契約解除を申し入れられた。松尾氏はラジオ番組などで、次のように言及した。
「今回の疑惑を放置することは、ジャニーズ事務所だけの問題じゃないと思っています。一番の弊害は、今回の報道やマスコミの有り様を見た子供たちが、もし性犯罪・性暴力の被害者になった時に『声を上げても無駄だ』という諦めの気持ちになるかもしれないことです。疑惑を放置することで、社会全体が諦めの気持ちを子供たちに植え付けかねないのではと、恐れを感じています」
子供たちに性暴力やいじめ、虐待を訴えることを諦めないよう呼びかけたのだった。
性暴力から子供を守る大人のひとりとして、松尾氏は正論を言ったに過ぎない。だが同氏の7月6日付の「日刊ゲンダイ」のコラムによると、スマイルカンパニー所属の山下達郎と竹内まりやも契約解除に賛成したことを、代理人弁護士を通じて確認したと暴露。「その上で契約終了の最終合意に応じた」というのだ。
同社の前社長は、ジャニーズ・エンタテイメントの代表取締役を務めていたことがある。前社長とジャニーズ事務所に楽曲を提供する山下・竹内夫妻、そして松尾氏との板挟みになっていたスマイルカンパニー・小杉周水現社長は、解除通告を告げられた松尾氏の方が驚いてティッシュボックスを渡すほど号泣したということから、苦渋の決断だったことが伺える。
この事態に怒り狂っているのが、全国のPTAだ。7月6日夜からSNSやネット掲示板では「山下達郎と竹内まりやには失望した。卒業生の定番ソング、竹内まりやの『いのちの歌』は二度と子供たちに歌わせない」として、竹内の楽曲ボイコット運動まで起きているのだ。
子供への性加害は「子供の魂を殺す」卑劣な犯罪だ。性被害に遭った子供は、自己否定感から自殺あるいは精神を病んで、社会生活が一生困難になることもある。その性犯罪者を擁護するダークサイドに立った竹内が、子供たちに「命の大事さ」を訴えたところで、もはや子供と保護者の心に竹内が長年紡いできた「美しい歌詞」は届かない。
山下達郎は7月9日放送予定の、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組で何を語るのか。
(那須優子/医療ジャーナリスト)