お盆の時期が過ぎ、いよいよ土用波が立つようになってきた。土用波とは、台風の影響で波が通常の2~3倍の大きさになり、海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする際、離岸流が発生しやすくなるものを言う。これが、昔からよく言わる「お盆に海へ入ると足を引っ張られる」という言い伝えの要因ではないかとされている。
もうひとつ、土用波が立ったら海に入るな、と言われる理由が、クラゲの大量発生だ。通常、クラゲは沖合に存在するが、土用波の時期になると、強い波の影響で波打ち際までやってくる。中には毒を持つ種類もおり、この時期なると決まって、全国でクラゲに刺される被害が続出するというわけなのだ。
クラゲの中でも特に毒性が強い仲間が多いのが、箱のような傘を持つハコクラゲ。このグループに属する「キロネックス」「キロデクテス・マクラツス」などは、地球上最強クラスの毒を持っており、刺されたら数分で心停止、死に至ることもある。
そんな猛毒ハコクラゲで、しかも24もの目を持つ新種が、香港有数の観光地として知られるマイポ自然保護区の湿地で発見されている。香港在住のジャーナリストが語る。
「マイポ自然保護区は、香港の中心街から北西に車で1時間ほどにある湿地帯。マングローブと水生植物が繁茂し、バードウオッチングの名所としても知られる自然豊かな景勝地です。発見したのは香港浸会大学(HKBU)生物学科に所属する研究チームで、同チームがエビや魚の養殖に使用される水域からクラゲのサンプルを収集したところ、体長1.5センチ程度の新種ハコクラゲが見つかった。毒性を持つこともさながら、目が24個もあるとして、大きな話題になっているのです」
事実、クラゲには15~16個の目を持つ種類がいる。理由は海中で360度の視野を確保するためではないかと言われているが、さすがに『24の瞳』を持つクラゲ発見には、世界の海洋生物学者らもビックリ。
このクラゲはマイポ自然保護区にちなんで「トリペダリア・マイポネンシス」と名付けられ、「トゥエンティフォーアイズ」というかわいらしい愛称で呼ばれているという。ただし、ちょっと触れただけでも全身に猛毒が回り、ヘタをすれば命を奪われかねない。研究者たちも、その扱いには慎重を期しているようだ。
(ジョン・ドゥ)