愛媛県新居浜市の新居浜港とその周辺で7月24日、特定外来生物に指定される「アルゼンチンアリ」が19匹発見され、翌25日にも65匹の働きアリが確認されたことから、夏休みに入った地元では連日、注意喚起が実施されている。
アルゼンチンアリは、南米を中心に世界各地に生息。毒性はなく、咬まれても人体への影響はないものの、定着すると在来種を食い尽くし、生態系を破壊する。日本では「侵略的外来種ワースト100」に指定される「不快害虫」とされてきた。
世界の外来侵入種ワースト100は、生物の多様性および人間活動に対する深刻な影響、生物学的侵入の重要な典型事例を基準に選ばれている。ここ数年の地球温暖化進行の影響で、昆虫の全体数が減る中、逆に増殖を続ける「世界の侵略的外来種」ワースト1位に君臨する生物がいる。それがヒアリだというのだ。世界の昆虫に詳しいジャーナリストの話。
「ヒアリは攻撃性が強く、時として人間を襲うこともある危険な外来種で、英語では『ファイヤーアント』と称されます。刺されると焼けつくような痛みを発生する毒を注入、その毒で生きている組織を破壊してしまう、恐ろしいアリです。彼らは数百、数千匹の働きアリによって、縦横に交差する広大な地下トンネルを形成。集団で鳥や爬虫類などに襲いかかると、その強靭な顎で噛みつき、巣穴に連れていった後、タンパク源をむさぼり食う獰猛ぶりを発揮します」
とはいえ、生息地の破壊や気候変動など、昆虫自体が全般的に減少していると言われる中で、なぜヒアリだけが増殖を続けられるのか。昆虫に詳しいジャーナリストが続ける。
「ヒアリは高温多湿の環境を好むため、もともと水路周囲に巣を作り、乾燥した気候にも対応してきました。ところが地球温暖化によるハリケーン発生や山火事の激化で、在来種がその土地を追われ、絶滅するなどしたことで、彼らの生活圏が急激に拡大した。その結果、在来種よりも優位に立ってしまったのです。洪水にも対応できる恐るべき適応力と生命力、さらにはどんな生物にでも襲いかかる貪欲な侵略性を兼ね備えるため、弱点がない。つまり気候変動が逆に、彼らに大いに味方したというわけです」
アメリカでは毎年400万人近くが、ヒアリに刺されて入院しているという。その約半数はなんらかのアレルギー反応を示し、1%前後が重篤な全身症状を発症すると言われる。
気象変動で能力を進化させ、各地で在来種の生息地を征服しながら、拡大を続けるヒアリ。残念なことに今、この侵略を阻むものは何もないようである。
(ジョン・ドゥ)