北海道蘭越町。静かな農村地帯が連日、大騒動に見舞われている。
町内にある地熱発電施設での調査掘削中に、蒸気が暴噴する事故が発生し、とてつもない騒音に発展。ワイドショーなどで報じられているのを目にした人もいるだろう。
さらに噴出している水を採取したところ、なんと飲料水基準の実に2100倍(1リットルあたり21グラム)という超高濃度の「猛毒ヒ素」が検出されたから、さぁタイヘン。すぐさま、とんでもない騒ぎになったのである。
当然ながら地元住民の健康被害、農作物への影響など、不安要素は拡大の一途を辿るばかり。調査掘削を実施した三井石油開発は住民説明会を開いたが、住民の怒号が浴びせられる事態になった。
大迷惑な騒動を起こした三井石油開発は蒸気暴噴の収束方法について、以下のような方針を明らかにしている。
●蒸気が噴出している現場に鉄板のフタをかぶせて、蒸気の噴出方向を変える
●その上で、長さ1キロのパイプラインを急ぎ建設して、坑内に大量の水を送り込む
●その結果、坑内の温度が下がることで、蒸気の噴出が止まる
●最後にコンクリートを坑内に流し込んで廃坑にする
同社はこれらの収束措置を「早ければ8月下旬までに完了して、沈静化させたい」としているが、一方で「状況によっては、遅れる可能性もある」との見解も示している。
地熱発電をはじめとする再生エネルギー発電に詳しい専門家は顔をしかめ、次のように吐き捨てるのだった。
「そもそも今回の事故は『暴噴』と呼ぶべき大惨事です。暴噴は坑口からの蒸気の吹き上がりが制御不能になるブローアウトのこと。にもかかわらず、三井石油開発が『噴出』という言葉を使って事態を矮小化していることが、まず問題でしょう」
そして今後に予測される「最悪のシナリオ」を、次のように口にした。
「地下約200メートルにある地層の亀裂から蒸気を暴噴させている圧力は、凄まじいものです。しかも地層の亀裂の下にどれくらいの量の熱水塊が存在しているのかも、全くの不明。したがって、坑内に水を送り込むことで暴噴が沈静化する、という保証はどこにもありません。本来であれば『地下の熱水塊が枯渇するまで暴噴は収束しない』という最悪のシナリオも想定しておかなければならない事態なのです」
地元住民は「8月下旬までの沈静化」を、ひたすら祈るしかないということか。