「このプロジェクトを通じ、世界中でもっと多くの人に培養肉のことを知ってもらいたい」
そんなコンセプトから、オーストラリアの培養肉新興企業「ヴォウ」が、人工培養したラム肉にマンモスのDNAを注入した「マンモスのミートボール」を製造。3月下旬からオランダのブールハーフェ科学博物館で展示が始まったとCNNなどが報道したことで、マンモスファンに衝撃が走っている。
ただ、この「マンモスのミートボール」は、凍結したマンモスの組織を直接入手したわけではなく、ゲノムデータベースからマンモスのDNA配列を特定。アフリカゾウのゲノム情報を使い、羊の筋肉細胞に合成した遺伝子を注入して培養させたというものだ。
同社では人間による消費は意図しておらず、あくまでも培養肉の潜在的可能性に注目してもらうことが目的だという。
「というのも、さすがに研究者たちの間でも、5000年間も存在していなかったたんぱく質が、潜在的にどんなアレルギーを引き起こすか全く分からない。試食した場合、その安全性が確保できない、というのが最大の理由です。ただ、昨年6月にはカナダで、ほぼ完全な形でミイラ化したのマンモスの赤ちゃんが発見されたこともあり、久々にマンモスブームが再燃しつつありますね」(古代生物研究家)
ミイラ化したマンモスの赤ちゃんとは、カナダの北西部ユーコン準州のクロンダイクゴールドラッシュ国立史跡公園で見つかった化石のことで、
「ユーコン準州政府の発表によれば、赤ちゃんは金の採掘場で、作業員が永久凍土の中から発見したもの。性別はメスで、3万年以上前の氷河期時代に死んだと推定されます。赤ちゃんマンモスの一部は1948年にアラスカで発見されたことがありますが、今回は保存状態が良く、先住民が使う『大きな赤ちゃん動物』という言葉から『ヌン・チョ・ガ』と命名された。現在も地質学者らによる研究が進められています」(前出・古代説物研究家)
「ヌン・チョ・ガ」は足の爪から皮、体毛、胴体、腸などが「驚くほど良好」な状態。ユーコンで野生の馬やライオン、バイソンなどと共存していたと推察され、おそらく母親と一緒にいたのが、はぐれて泥に足を取られたとみられる。
「マンモスは氷河期に世界各地で大繁栄を遂げたものの、絶滅の原因は謎のまま。人類による乱獲や狩猟説のほか、気候の大変化説、伝染病説、隕石衝突説など、複数の仮説がある。
「どれも信憑性がある一方、反論の余地があるのも事実です。この赤ちゃんミイラの分析により、謎がどこまで解明されるかはわかりませんが、地質学者だけでなくマンモスファンにとっても、この発見は謎を解き明かすための大きな一歩。期待は膨らむばかりです」(前出・古代生物研究家)
赤ちゃんミイラにとミートボール製造で、再び「マンモスブーム」到来なるか。
(ジョン・ドゥ)