ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、世界を震撼させた「ワグネルの乱」から5日後の6月29日、モスクワにあるクレムリン(ロシア大統領府)でプーチン大統領と会談を持ったとされるエフゲニー・プリゴジン氏。その後、プリゴジン氏を巡っては「プーチンによって消された」との衝撃的な死亡説も流れたが、7月19日、そのプリゴジン氏が隣国ベラルーシでワグネルの戦闘員を前に演説する様子を伝える動画が、ワグネル系列のSNSによって投稿、公開された。
約6分間にわたる動画で、プリゴジン氏とみられる人物は「我々はしばらくベラルーシに滞在する」とした上で、ベラルーシ軍を米軍に次いで「世界で2番目に強い軍隊にする」などと語った。 さらにこの動画では、ロシア軍の情報機関GRU(参謀本部情報総局)の元高官で、プリゴジン氏とともにワグネルを創設したドミトリー・ウトキン氏とみられる人物が戦闘員を前に、次のようにブチ上げている。
「これは始まりだ。われわれは近々、世界で最大規模のことをやってのける!」
世界で最大規模のこと──。プリゴジン氏らは何を企んでいるのか。この点について、ロシアの軍事情勢に詳しい国際軍事アナリストは「プリゴジンには影武者もいて、情報も交錯しているが」と前置きした上で、次のように指摘する。
「ワグネルは今、プリゴジン傘下の勢力と、ロシア軍傘下の勢力とに分裂している。このうち、ベラルーシにいるプリゴジン傘下の戦闘員は2000人規模で、プリゴジンへの忠誠心が高い精鋭部隊。そんな中、欧米の諜報筋は、プリゴジンらがプーチンのもとでの復権を果たすべく動くとみている。この2000人を率いてベラルーシに配備されているロシアの戦術核を乗っ取り、ウクライナの首都キーウへの核攻撃に踏み切るのではないかと、神経を尖らせているのです」
しかもこの乗っ取り計画にはプーチン大統領のほか、ベラルーシのルカシェンコ大統領も、裏で糸を引いている可能性があるというのだ。
「プリゴジン傘下のワグネル部隊による核攻撃を装うことで、プーチンとルカシェンコは直接的な責任を回避できる。それとともに、場合によっては停戦交渉に持ち込む道筋も見えてくる。極悪非道の独裁者たるプーチンとルカシェンコならやりかねないと…」(前出・国際軍事アナリスト)
反逆者プリゴジンを「始末」するのは、それからでも遅くはないということか。