いったい何の騒動だったのか。プーチン大統領のシンパで「ロシアの狂犬」と言われる民間軍事会社・ワグネルのエフゲニー・プリゴジン氏の「反乱」は、三日天下どころか一日の遠吠えで終わった。
公安関係者が説明する。
「ご承知の通り、ワグネルは対ウクライナ戦線の最前線で戦い、多くの犠牲を払いながらも一時劣勢に立たされていたロシアの勢いを盛り返したヒーロー的な存在。そしてプーチン氏とはツーカーだけに、プリゴジン氏は言いたい放題の状態です。特に対ウクライナ戦では国軍と対立し、ショイグ国防相やゲラシモフ軍参謀総長らを猛烈に批判してきた。ショイグ氏はワグネルが7月1日までに国防軍傘下に入るよう求めていたが、プリゴジン氏が拒絶し、対立がエスカレートしていたんです」
こうした流れの中、ワグネルの反乱が始まったわけだが、プーチン氏は「プリゴジンは反逆者」「抹殺せよ」と強い演説に打ってでた。するとロシア隣国のベラルーシのルカシェンコ大統領がプリゴジン氏の説得にあたり、プリゴジン氏はモスクワへの進軍を止め撤退を開始した。裏で何が起きていたのか情報が錯綜しているが、前出の公安関係者によれば、主に以下のような説が飛び交っているという。
「プリゴジンの背後には、欧米CIAやイギリス諜報部隊M16、同特殊部隊SASもいる。欧米とのタッグでプーチン氏、ショイグ氏らを潰しに打って出たが、最後はプリゴジン氏が弱気になり腰砕けとなった」
「プリゴジン氏は一時的に国軍執行部に頭に来て反乱を起こしたが、冷静になるとどうあっても国軍に勝てないと悟り撤退した」
さらに、公安関係者は「最初から反乱などない。プーチン氏とプリゴジン氏が示し合わせて演じた猿芝居なのでは」として、こんな説を唱える。
「プーチン氏はいま、ウクライナの反転攻勢で苦しんでいる。さらに1年にわたる侵攻でロシア国民内でも不満が溜まりつつある。そして来年はロシア大統領選。そこで負けるわけにはいかないプーチン氏が『突然起きた反乱をたった1日で鎮圧した』となれば、再び国民の人気が高まる。なんだかんだ言って旧知の仲であるプリゴジン氏と協力し、今回の猿芝居に打って出たのでは」
ただ、ロシアの一部メディアなどではプーチン氏がプリゴジン氏の殺害指令を出したとも報じられており、どの情報が本物か混沌としている。いずれにせよ、プリゴジン氏の動向が今後のウクライナ紛争、ロシア情勢の大きなポイントになるのは間違いない。
(田村建光)