海外旅行が自由にできるようになった今、顔認識システム方式による自動化ゲートの導入が世界各国で進んでいる。日本では2018年から羽田空港、関西空港、中部空港、福岡空港で導入され、パスポートにスタンプが溜まるのが旅の醍醐味だったのに…と寂しがる声もあった。
税関職員に希望を言えばスタンプを押してもらうことができるのだが、ほとんどの人は押さないだろう。だが出入国スタンプが、時には重要な役割を果たすことがある。とある男性の証言を聞こう。
「先日、東南アジアを旅行してきたのですが、帰国の際に乗り継ぎがあったんです。荷物はバゲージスルーだったので、そのまま日本行きの飛行機に搭乗しました。成田空港に到着し、預けていたスーツケースを受け取ると、一部が破損していることに気が付いたんです」
そのスーツケースは3年ほど前に購入したものだった。価格は5万円と、決して安くはない。気に入っていたデザインだったのだが、これは買い替えるしかないのか…と落ち込んでいたところ、友人から「クレジットカードの付帯保険で修理できるかもしれない」とのアドバイスを受けたという。
「カードを確認すると、携行品損害補償で、無料で修理できることがわかりました。すぐにカード会社に連絡すると、必要書類とともに旅行を証明するものが必要だと言われたんです。証明するものは搭乗券の半券で、航空会社が発券した旅程表は認められていません。ところが半券は、飛行機を降りてすぐに捨ててしまっていたんです。諦めかけていた時、パスポートの出入国スタンプを押していたことに気が付きました」
実はパスポートにスタンプを集めるのが趣味で、自動化ゲートが導入された今も、必ずスタンプを押してもらっていたのだ。そのページをプリントしてカード会社に送ったところ、無事に認められ、スーツケースの修理を受けることができたのである。
便利になった自動化ゲートだが、万が一のために、出入国スタンプを押すことを忘れないようにしておきたい。