閑話休題─。話題は変わって球界から将棋界へ。6月の名人戦で最年少七冠を達成した藤井聡太(21)のルーティーンは大谷とはあまりに対照的だった。
名人戦対局中のインタビューでは、みずからの睡眠ルーティーンに関しこう明かしている。
「朝起きてからのルーティーンは特にないんですが、普段だと二度寝してしまうことがあります。目覚まし時計を7時過ぎにかけているんですが、実際には8時台に起きている。タイトル戦では、そんなことがないように気をつけています」
何と天才棋士も日常では“うっかり二度寝”の常習犯だというのだ。将棋ライターが打ち明ける。
「普段から7〜8時間の睡眠時間をとるなどして体調維持を心がける藤井七冠ですが、タイトル戦の対局後は、部屋に戻ってから、その日の棋譜を振り返っている。そのため、早く寝ようとしてもアレコレ考えすぎて午前0時を過ぎてしまうことがあるようです。ですから、あらかじめお風呂に入る時間や歯磨きの時間を決めることでタイムマネジメントしているようです」
対局では序盤から惜しみなく長考し、持ち時間を使い果たすことの多い藤井七冠だが、虎の子の就寝タイムだけは削りたくないようだ。
7月に4度目の防衛を果たした棋聖戦後には、
「最近は疲れが残りやすくなってきた気がする。しっかり睡眠をとり、適度に運動するなど心がけたい」
と語っていた。今後の課題は体力アップだという。
「学生時代は足が速かったことで知られているが、高校卒業を断念してからは自宅で過ごす時間が極端に増えた。自分でも『対局が一番の運動になっている』と笑い話にしていたほどで、運動する機会は皆無だった。最近は、体力アップのため腹筋10回と近所の散歩を始めたそうです」(将棋ライター)
しかし、これだけで運動不足が解消されるはずもなく‥‥。昨年の棋聖防衛戦では体力不足が身に染みる結果を招いた。対戦相手は藤井七冠が最後に挑む王座のタイトルホルダー永瀬拓矢王座(30)。将棋ライターの松本博文氏が振り返る。
「永瀬王座は体力勝負に持ち込んで勝つというのを得意のパターンとしている。実際、棋聖戦第一局はダブル千日手で、2度も指し直しの持久戦となり、藤井さんは珍しく粘り負けてしまった」
その後、怒濤の3連勝で棋聖防衛に成功したものの、以後、持久戦対策のため体力アップが課題となっていたのだ。
「もっとも、現在は散歩の日課はあっさりやめているようです。なんでも、『散歩先から帰ってくるのが面倒』という天才ならではの理由で、家の中を歩いて歩数を稼いでいるそう。とはいえ、体力アップのためにトレーニングマットを購入し、プランクなど体幹運動を取り入れているそうです」(将棋ライター)
まさに泰然自若スタイルでの七冠達成を松本氏はこう見る。
「将棋には技術が大事だが、次にスケジュール管理も大事な要素です。その点、羽生善治九段(52)は優れていたが藤井さんは同じ系譜のストイックなタイプです。今後長く天下を取ることが予想されます」
心技体、そろい踏みとなれば史上初の八冠も射程に入ってくる‥‥。