暗殺者の影に怯えるロシアのプーチン大統領。その「異常行動プロファイル」の第2回目では、プーチンが仕立てさせた「特別装甲列車」を取り上げる。
国内外を問わず、プーチンが移動する際には通常、大統領専用機が使用されてきた。近距離の移動では専用ヘリが使われることもあったが、最近は「撃墜」を恐れ、専用機や専用ヘリへの搭乗を封印している。
とりわけウクライナへの侵攻を開始して以降は、海外への渡航の機会は極端に少なくなり、厳重警戒下での国内移動に終始している。そしてそのロシア国内での隠密移動の際に、もっぱら使用されているのが「特別装甲列車」なのだ。
特別装甲列車の使用が開始されたのは2014年のことだが、頻繁に使用されるようになったのは、ウクライナ侵攻の前年からだと、プーチンの動静に詳しい国際軍事アナリストが明かす。
「プーチンが仕立てさせた特別装甲列車は、動力車や輪軸(車輪や車軸)などの数が多く、外部からの砲撃などを受けても命を落とすことのない、頑強な構造をしています。また、会議室や書斎や寝室などを備えた大統領専用車両、側近らのための車両、通信車両など、編成もまた特別仕様になっているわけですが、見た目はロシア国内の一般的な車両と区別できないようにしてある。それら一般的な車両と同じく、灰色の地に赤色のストライプを施したデザインにすることで、特別装甲列車であることをカモフラージュしているのです」
この特別装甲列車については、トルコに亡命したFSO(ロシア連邦警護庁)の元情報将校グレブ・カラクロフ氏も、海外の調査機関に次のように証言している。
「特別装甲列車はステルス性が極めて高い。専用機や専用ヘリに比べて運航情報を追跡されにくく、プーチンの隠密移動を可能にしている」
独裁者プーチンは暗殺や攻撃に怯えながら特別装甲列車を秘かに使い、ロシア国内に偽装配置した大統領執務室(前回記事参照)を行き来しているのだ。
(つづく)