北海道・札幌への通勤圏でもある風光明媚な町に住む17歳の女子高生が、深夜、自宅で母親と祖母の寝込みを襲い包丁で惨殺した事件。「今の状況から逃げたかった」と取調室で漏らした少女は、長年の“家庭内奴隷”の呪縛に苦悶していた。募る殺意を実行に移させた2世帯同居の修羅生活とは──。
のどかな田園風景が広がる北海道空知郡南幌町の大きな一戸建。この家に住む祖母(71)と母親(47)の血だらけの惨殺死体を、仕事から帰った長女(23)が発見、警察に通報したのは10月1日午前2時半頃のことだった。
玄関には鍵がかかっていたが、勝手口は無施錠で、家の中はあちこちのタンスの引き出しが開けられ、荒らされたような形跡もあったため、警察は当初、強盗殺人を視野に捜査を進めようとした。
だが、その日のうちに「犯人」は逮捕される。
「同じ敷地だけど『離れ』で寝ていたので、物音は聞こえなかった」
と、警察に説明していた高校2年の三女A子(17)が、捜査員に詳しく事情を聞かれるうちに、2人を包丁で殺害したことを自供したのだ。
社会部記者が犯行の手口について解説する。
「深夜に寝静まったところで、A子は軍手をはめて台所にあった包丁を持ち出すと、まず1階で寝ていた母親から襲ったと見られています。背中を数カ所刺し、起き上がろうとした母親の首元を狙うと、ノドボトケから頸動脈まで切り裂き、それが致命傷でした。返り血を浴びたまま2階に移動すると、寝ていた祖母の胸と顔を中心に7カ所刺したのですが、特に顔はひどく切りつけられ、血だらけだったそうです。祖母の右手には抵抗した際にできる防御創がありました」
A子は取り調べに対し、
「しつけが厳しく、今の状況から逃げ出したかった」
と供述しており、祖母と母親に深い恨みがあったようだ。
そして、月末で遅くまで働いていた長女は、妹が血の海に染めた“我が家”に帰ってくると、突然、隠蔽工作を始めた。
社会部記者が続ける。
「長女とA子は自宅から約5キロ離れた公園の川に車で移動すると、凶器の包丁は軍手とともに黒いビニール袋に入れ、血だらけの着衣は透明のビニール袋に入れて川に捨てた。で、自宅に戻ってから警察に通報したんです」
A子は逮捕直後、「(凶器と衣類は)自分で自転車に乗って捨てに行った」と長女をかばっていたが、取り調べで姉と一緒に隠したことを認めた。
長女にすれば、凶器を隠して物取りの犯行に見せかけたことがバレれば、犯人隠避の疑いをかけられることはわかっていたはず。はたしてこの一家に何が起こっていたのか。