各球団にとって選手の年俸とは、投資に見合うだけの働きを期待しての前払い金でもある。ところが今年も、期待を裏切るコストパフォーマンスの高い選手が続出。「過払い金」を請求したくなるような両リーグのワーストナインを発表しよう。
相撲界には「家賃が高い」という隠語がある。前場所の好成績により、実力以上の地位に上がって苦戦するという意味だ。
地位を年俸に置き換えれば、今季の阿部慎之助(35)はまさに「家賃が高かった」と言えるだろう。昨オフ、リーグ優勝に主将として貢献したことを評価され、3000万円増の6億円で契約を更改。しかし、球界最高額選手として臨んだ今季は、首を痛めた影響もあり、打率は2割5分にも届かなかった。1安打当たりの単価が500万円超ではあまりにも高いと言えるだろう。巨人OBでもある野球評論家・広澤克己氏は、阿部のフィジカル面についてこう指摘する。
「首を痛めたことで全力疾走ができなかった。走れないから太る、太るから体のキレが悪くなってスイングが鈍るという悪循環です」
ロッテ、中日で活躍した評論家・愛甲猛氏も厳しい見方をする。
「今年の阿部は、見ていても覇気が感じられなかった。併殺打も多かったしね(15本)。捕手としてもホームを死守しようという意識が感じられず、特に横の動きがダメだった。ルーキーの小林誠司(25)が経験を積んで使えるめどが立ったから、そろそろ引退後のことでも考えているのかもね」
日本一奪還には主将の活躍が不可欠。CS、日本シリーズでの挽回となるか。
投手としては球界NO2の年俸4億円を誇る内海哲也(32)も、7勝9敗という結果では高給に見合う成績を残せたとは言いがたい。投手出身の評論家・橋本清氏が解説する。
「年俸を考えると15勝ぐらいしなければならず、貯金も作らねばなりません。シーズン序盤でつまずいて負けが先行したのが痛かった。後半は何とか盛り返しましたが、彼がこけっぱなしだったら巨人の優勝はなかったでしょう」
落合博満氏(60)のGM就任で下馬評の高かった中日も足を引っ張る選手に事欠かない。中でも7月に前人未踏の400セーブを達成した中日の守護神・岩瀬仁紀(39)は、直後の8月に左肘を痛め出場選手登録を抹消。20セーブ止まりでシーズンを終えた。
「実績を考えれば3億7000万円の年俸は妥当なものですが、年齢的にはそろそろ限界なのかなという気がしますね」(橋本氏)
プロ1年目から昨季まで15年連続で50試合登板を続け鉄人ぶりを発揮してきた岩瀬だが、ここ数年は救援失敗のケースも目立ち、“金属疲労”もささやかれているが‥‥。
「全盛期には、ここぞの場面でスライダーで空振りが取れたが、最近はバットに当てられてしまう。これではクローザーとして少し苦しい」(広澤氏)
大幅なリストラが断行される中日だけにベテランも例外ではない。来季からの身の振り方に注目だ。