「A子は教室ではほとんど無口だけど、特別いじめられているわけでもなかった。ソフトボール部で3年の時には身長160センチくらいで細身なんですけどパワーヒッター。4番を任され、道内の大会で活躍していました。だけど『門限が5時だから』と言って、ほとんど練習に参加できなかったんです」(中学校の同級生)
門限を破って祖母の逆鱗に触れるのを恐れ、毎日のように走って帰宅していたという。この“奴隷生活”から脱出したかったA子は、進路の悩みも打ち明けていた。
「自衛隊を希望していて、先生に『中卒でも入れるんですか』と相談していた。自衛隊に入れば衣食住で困ることはなかったので、本気で入隊を考えていたそうです」(中学の同級生)
地獄のような家を出て、1人暮らしへの強い願望が中学時代から芽生えていたのか‥‥。
結局、自宅近所の高校に進学することを選んだA子は積極的に学校行事に参加。生徒会では役員を務め、次期生徒会長に就任する予定だった。「学校生活を楽しんでいるように見えた」と言うA子の高校の同級生は、一方で、こんな胸のうちを聞いている。
「以前、仲間うちで、生徒会活動のやりがいについて話題になったことがありました。その時A子は『生徒会の活動がある時は、すぐ家に帰らないでいいから‥‥』と、こぼしていました」
そんな中、A子が「奴隷生活」を強いられていた一家に雪解けムードが漂う出来事もあった。
A子が今年1月5日から、学校の「国際交流」でニュージーランドに短期留学。帰国後に学校でこんな文書で報告しているのだ。
「私はもともと自分が思っていることや、説明したいことを相手に伝えることが苦手でいつも曖昧にしか言えませんでした。(中略)曖昧な言葉は相手を困らせ、時には自分自身をも困らせてしまうことがあるのです。一週間という短い期間でしたが日本に帰ってきて外国に行った体験を家族に説明した時、とても楽しんで聞いてもらいました」
短期留学後の報告会には、祖母と母親の姿もあったという。
それから約9カ月の間に何が殺害を決意させたのか。9月25日、A子はツイッターで、犯行を予告するような内容をつぶやいた。
〈絶対あれだな、あれしちゃうかな。がち消してやりてぇ 存在も記憶からも〉
文章のあとには、包丁の絵文字が15個も表示されている。逮捕後、捜査員に後悔の気持ちを漏らしているというA子。
「同時殺害」を実行しても、苦しみから解放される日は訪れなかったようだ。