しかし、来季に不安なデータがあります。ゴメスはプロ野球歴代7位の166三振を喫しましたが、メヒアも歴代14位の156三振を記録しています。途中来日で打数の少ないメヒアの三振確率は2.88打席に1回でした。仮にゴメスと同じ打席数に立っていれば、93年の近鉄・ブライアントのシーズン歴代最多記録204三振を上回る213三振を記録していたことになるのです。これは、ゴメス以上に絶対に打てないゾーンがあるということです。今季と同じスタイルで打席に立つならば、厳しいシーズンを迎えることになりそうです。
今までも2年目に成績がガタ落ちし、日本を去った選手が何人もいます。そういう選手は「野球」に順応できなかったのです。日本はアメリカよりチーム数が少なく、対戦回数が多いため、データ収集も緻密になります。打てるコース、打てないコースなど、まる裸にされます。そして、アメリカでは投手は自分の得意な球で勝負しますが、日本では徹底的に弱点を攻めてきます。ベースボールと野球の違いです。
実際に成功した外国人選手は、適応するために努力を怠りませんでした。ヤクルトのバレンティンもその一人です。1年目の成績は打率2割2分8厘、31本塁打でした。本塁打王にこそ輝きましたが、あまりにも安定感に欠ける内容でした。ところが、相手投手の配球データを研究し、2年目はコンパクトな打撃に変えてきました。3年目の昨季はさらに進化し、60本塁打のプロ野球記録を樹立。今季はケガに泣かされましたが、それでもきっちり打率3割、30本塁打以上をマークしました。
阪神の最強助っ人と言われたバースは、グラウンド外でも適応していました。同僚と将棋をするほど、日本の文化になじんでいたのです。ひょっとすると、ベースボールと野球も、チェスと将棋ぐらい頭を切り替える必要があるのかもしれません。相手から奪った駒を再利用できるなど、チェスしか知らない人には考えられないことでしょうから。さまざまなカルチャーショックを克服して初めて、長く日本で活躍できる選手となるのです。
先日、引退を発表した元巨人のラミレスも「野球」に順応した代表的な選手。外国人選手初のNPB通算2000本安打を記録した、まさにレジェンド的な存在です。今季はBCリーグの群馬で、打撃コーチ兼任でプレーしましたが、NPB復帰の夢はかなわずユニホームを脱ぐことになりました。年俸は巨人時代の最高5億円と比べて100分の1の500万円(金額は推定)でした。プライドを捨ててでも「野球」にしがみつく姿は、ジャパニーズドリームを夢みる新外国人選手の模範と言えるかもしれませんね。
阪神Vのための「後継者」育成哲学を書いた掛布DCの著書「『新・ミスタータイガース』の作り方」(徳間書店・1300円+税)が絶賛発売中。