阪神は大型補強がないまま、「球界の正月」である2月1日のキャンプインを迎えました。鳥谷の残留という追い風は吹きましたが、球団内外から戦力についての不安の声が聞こえてきます。ただ、私がはっきりと言えるのは、「弱いチームではない」ということです。
確かに昨季は日本シリーズに出場したとはいえ、リーグVの巨人に7ゲーム差をつけられました。その差を埋めるべく、目に見える戦力的な上積みはありません。しかし、チームには打点王のゴメス、首位打者のマートン、最多勝のメッセンジャー、最多セーブの呉昇桓、最多ホールドの福原とタイトルホルダーがずらりと顔を並べています。鳥谷、福留、西岡ら実績のあるビッグネームもそろい、決して弱いチームではないのです。
ただし、間違いなく優勝争いに絡む「強いチーム」とも言い切れません。理由は懸念材料が多すぎるからです。首脳陣の期待どおりに各選手が働けば優勝を狙えるのですが、アクシデントが起きた時にどう対処するのか。私が特に心配しているのが、来日2年目のゴメスです。
1年目の昨季は143試合に4番として出場し、打率2割8分3厘、26本塁打、109打点のすばらしい成績を残しました。当然、ライバル球団はデータを洗い出し、ゴメス対策を徹底してきます。もともと打撃は粗い面があり、昨季の166三振は球団の歴代ワーストの数字でした。今季も不動の4番として機能するためには、オフをどう過ごしたかが大事です。
相手と同じようにゴメスも、球団からもらった配球などのデータで研究しなければいけません。誰しも同じことが言えるのですが、客観的なデータを見つめ直すと、実際に打席の中で感じていたこととズレが出てくるはずです。このズレを認識し、弱点を克服するための準備ができているかどうか。2年目のシーズンに向けては、体を仕上げる以上に、頭脳の準備も大切になってくるのです。
外国人選手にとっては2年目が大きな分岐点です。相手のマークがきつくなる中で成績を残すと、長い間、日本で活躍できる選手になります。逆に1年目はよくても2年目はまったくダメになる選手も多いのです。危機感を持って2年目を迎えるか、日本の野球をナメてしまうか。どちらの道を歩むかは本人しだいです。
もし、ゴメスが後者だとしたら、阪神打線は根幹が揺らぎます。なぜなら「一塁・4番」の代役はいないからです。昨季までならスペアとなりえた新井貴も広島に移籍しました。ケガをした場合も含めて代役がいないということは、大きな不安材料です。杞憂に終わればいいのですが、ゴメスが「使えなくなった場合」の手段をフロント、首脳陣とも早めに考えておくべきでしょう。
そして、ゴメスとともに注目し、懸念しているのは西岡と上本の二塁のレギュラー争いです。この処置を和田監督が誤ると、チーム瓦解につながりかねない導火線に火がつきます。よけいな感情は捨て、信念を持って、実力だけで優劣をつけなければいけません。
昨季はケガで泣いた西岡もプライドがあるでしょうし、上本も昨季の経験を生かせば、さらなる成長が見込めます。この二塁争いが正しく行われれば、間違いなくチームを活性化させるとともに、外野も含めて、他のポジション争いにも波及するはずです。虎の二塁は誰が奪うのか。キャンプインから目が離せない戦いとなります。