夏の甲子園決勝は103年ぶりの決勝進出で1916年以来2度目の頂点を目指す慶応(神奈川)と、史上7校目の夏連覇がかかる仙台育英(宮城)が激突。慶応が8-2で優勝を決めた。
この試合のチケットは発売1時間で完売。慶応応援席の3塁側のアルプススタンドが真っ先に売り切れるというフィーバーぶりだった。
一方、今大会からは「暑さ対策」として、5回終了後10分間のクーリングタイムを導入。ベンチ入りは2人増えて20人になった。しかし熱中症や、体を冷やしたことで直後に足の故障を訴える選手もいた。
こうした事態に巨人・ヤンキースで活躍した松井秀喜氏はスポーツ紙の中で「夏の甲子園を2部制にすべき」と提言した上で「高校生がフラフラになりながら美談に扱われることに違和感がある」と発言。1984年レスリングロサンゼルス五輪代表で石川県の馳浩知事も県大会の決勝戦の開始時間について「お昼の午後12時半のプレイボールというのはおかしい」と酷暑の中であえて行う高校野球を公然と批判している。
夏の甲子園は全国高等学校野球連盟(高野連)と朝日新聞が主催している。昨年の大会では入場料収入だけで9億円超。同じ高校生スポーツのインターハイで各競技が毎年深刻な資金難に喘ぐ中、一昨年と比較しても約2.8億円収入が増えた。高校野球担当記者によれば、
「高校野球人気は明らかに上がっています。今年はチケットも異常な争奪戦でした。一方で、全試合生中継をするNHKには放映権料を要求していません」
これは高野連が公益財団法人であることが理由らしいが、例えば日本相撲協会は高野連と同じ公益財団法人にもかかわらず、年間30億円以上の放映権料契約をNHKと結んでいる。審判がボランティアであることなど、それだけ高校野球は表面上、非商業主義を貫いていると言えるが、
「朝日新聞も高校野球のネガティブな記事はご法度。この夏も主催者が両手を挙げて『感動をありがとう』という報道ばかり。入場料収入で大胆な酷暑対策をという話は出てきません」(別の担当記者)
酷使されるのは今年も球児たちだった。
(小田龍司)