JRや大手私鉄が使用していた車両が新型に置き換えられると、その多くは廃車になる。鉄道ファンの間では廃車になることを「重機の餌になる」と言い、貴重な車両が取り壊された時はSNSで拡散されることも珍しくない。
しかし、中には地方の中小私鉄に譲渡され「第2の人生」を送る車両もある。東京で何度も乗った車両をローカル線で偶然見かけた時の感動はなかなかのものだ。そんな譲渡車両の中でも特に数が多く、日本各地で活躍しているのが京王井の頭線で走っていた「京王3000系電車」(写真)だ。
鉄道ライターが語る。
「京王3000系は1962年から91年まで井の頭線で運用されていた車両で、29編成145両が製造されました。京王電鉄としては初のオールステンレス車両で、ボディはそのステンレスの地色を活かしています」
井の頭線から撤退してすでに32年経つが、石川県の北陸鉄道石川線や群馬の上毛電気鉄道、静岡の岳南電車、長野のアルピコ交通、愛媛の伊予鉄道と、5つのローカル線で今も運用されている。
それぞれに魅力があるそうで、
「井の頭線を走っていた時の雰囲気を残している北陸鉄道や上毛電気鉄道、岳南電車の車両がある一方で、アルピコ交通は車体全体を白にしたり、伊予鉄道は会社のイメージカラーであるオレンジ一色にするなど独自の外観にしているのも面白い。都会が似合っていた3000系がのどかな景色の中を走るのを見るのもいいものです」(前出・鉄道ライター)
今も元気に走る3000系だが、少しずつ置き換えが進んでいる。乗りに行くなら早めにしたほうがよさそうだ。